勤務証明書の評価引き上げの見返りとして解雇を受け入れた被用者は、その合意を破棄して解雇無効の確認を求める訴訟を起こすことができるのだろうか。この問題をめぐる係争でニーダーザクセン州労働裁判所が3月に判決(訴訟番号: 5 Sa 1099/13)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は経営上の理由で解雇通告を受けた食肉加工職人が雇用主を相手取って起こしたもの。雇用主は2013年3月5日、原告職人に対し6月末日付で解雇することを通告した。両者はその際、雇用主が勤務証明書の評価を、平均的な評価よりも上の「良(gut)」とする見返りとして、原告が解雇取り消し訴訟を断念することを文書で取り決めた。
原告はその後、考えを変え、解雇取り消し訴訟の断念合意を撤回するとした文書を雇用主に送付。3月26日に提訴した。
1審のハノーバー労働裁判所は原告の訴えを棄却。2審のニーダーザクセン州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官はまず、普通約款の作成使用者(ここでは被告)が信義義務に反して契約相手(原告)に不利な取り決めを行った場合、その取り決めは無効となるとした民法典(BGB)307条1項の規定を指摘。そのうえで、原告は訴訟断念の見返りとして高い勤務評価を受けており、被告との取り決めは原告にとって不利でないとの判断を示した。