欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2014/10/15

総合 - ドイツ経済ニュース

「均衡財政達成よりも景気促進策を」、秋季予測が提言

この記事の要約

Ifoなど有力経済研究所は9日に公表した共同作成の秋季経済予測で、今年と来年の独国内総生産(GDP)予測を下方修正した。4月に発表した春季予測では内需主導の経済回復が加速するとしていたが、景気がその後、大幅に冷え込んだと […]

Ifoなど有力経済研究所は9日に公表した共同作成の秋季経済予測で、今年と来年の独国内総生産(GDP)予測を下方修正した。4月に発表した春季予測では内需主導の経済回復が加速するとしていたが、景気がその後、大幅に冷え込んだと指摘。欧州中央銀行(ECB)が打ち出した金融政策の経済波及効果は限られているとして、均衡財政の達成よりも当面は景気促進策を優先するよう呼びかけた。同様の要求は国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)内からも出ており、2015年に46年ぶりの無借金財政実現を目指すドイツへの風当たりが強くなってきた。

有力経済研究所は春と秋の年2回、経済予測を共同作成して政府に提出している。

予測ではまず世界経済の現状に言及。米国などは好調なものの、世界全体の成長率は鈍く、特にユーロ圏は回復軌道に乗るとの見通しが外れたと指摘した。ウクライナ問題とそれに伴う欧米とロシアの制裁合戦、およびシリア・イラク情勢の緊迫も大きな影を落としており、世界の成長率は今年が2.6%、来年も3.0%にとどまるとしている。春季予測ではそれぞれ2.9%、3.1%を予想しており、下方修正した格好だ。

世界経済のリスク要因としては中国の不動産バブル崩壊、ロシアと西側諸国の対立、ユーロ圏の銀行が抱える不良債権を挙げた。不良債権の圧縮が滞ると、一部のユーロ加盟国で銀行の融資抑制が続き景気を長期的に圧迫すると指摘している。

ユーロ圏を襲う低インフレ率については、既存債務の実質負担の拡大につながり景気低迷に追い打ちをかけるとしている。ただ、ユーロ圏がデフレに陥る兆しは現時点でないと断定した。

ドイツ経済は第2四半期に急減速し、実質0.2%のマイナス成長(前期比)に陥った。予測はこれを「予想外だった」と認めたうえで、世界経済の低迷、ユーロ経済の弱含み、地政学リスクといった国外要因が企業投資と個人消費に悪影響をもたらしているとの見方を示した。製造業受注・生産指数はこのところ落ち込んでおり、GDP成長率は第3四半期もゼロ成長にとどまると指摘。今年通期のGDP成長率を春季予測の1.9%から1.3%に引き下げた。

来年については内需が徐々に加速してくるものの、年金改革と全国一律の最低賃金導入、および均衡財政の達成を優先する政府の姿勢が大きな足かせとなり、成長率が1.2%にとどまるとの見方を示した(春季予測では2.0%を提示)。外需については輸出の伸びが輸入の伸びをやや下回るため、成長率の押し下げ要因になるとしている。(表参照)

政府は財政目標堅持

秋季予測は政府が財政再建に取り組むのは原則的に好ましいとしながらも、現在の厳しい経済状況下では景気刺激に向けた財政措置が必要だと指摘。ドイツの財政には現在、そうした政策を実施するだけの余地があるとして、投資・経済成長を促進する税制の導入や税負担の軽減、歳出拡大に取り組むよう促した。

政府は14日、秋季予測を踏まえて今年のGDP成長率を従来見通しの1.8%から1.2%に下方修正した。来年についても2.0%から1.3%に引き下げている。

ガブリエル経済相は記者会見で、ドイツ経済は極めて難しい状況にあると述べ、秋季予測と同様の認識を示した。ただ、内需については安定していると指摘。また、ドイツは内需拡大とそれを通したユーロ経済の回復に向けて財政出動を行うべきだとの要求が国外から出ていることに関しては、「ドイツの新たな債務はフランスやイタリア、ギリシャの経済成長をもたらさない」と明言。経済不振のユーロ加盟国は構造改革を自ら行い成長を実現しなければならないとの認識を示した。均衡財政を計画通り15年に達成する考えだ。