賃金の支給額が労使契約の取り決めを下回っているとして、被用者は勤務を拒否することができるのだろうか。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が昨年10月に判決(訴訟番号:5 Sa 111/13)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は床板敷設業務に従事する被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。労使契約では特定の敷設作業を出来高払いとし、それ以外は時給を12ユーロとすることが定められていた。
原告は2012年8月29日、ほぼ同じタイプの家屋40軒を対象とする床板敷設作業を開始した。賃金は出来高払いとなっていた。その週の週末に同業務の賃金を時給ベースで計算したところ、7.86ユーロと低かったことから、原告は「適切な時給」の支払いなどを雇用主に要求。これが拒否されたため、勤務を拒否した。
雇用主はその後、原告に対し勤務を行うよう何度も促したが、原告が受け入れをかたくなに拒否したため、即時解雇せざるを得なくなると警告。それでも原告が勤務につかなかったため、即時解雇を通告した。
原告はこれを不服として提訴。1審で勝訴したものの、2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁は逆転敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、原告が命じられた床板敷設作業は家屋建設に必要な他の作業と連動しており、原告が作業を行わなければ川下の作業に支障が出ると指摘。原告はまず40軒の敷設作業を終えたうえで、賃金について雇用主と協議すべきだったとの判断を示した。
最高裁への上告は認めなかった。