液化天然ガス(LNG)発電設備を搭載したバージ(重い貨物を積んで港湾内を航行する平底の被けん引船)が18日、ハンブルク港に登場した。同タイプのバージは世界初。同港に停泊するアイーダ・クルージズ社の大型クルーズ船に電力を供給し、同社のクルーズ船が環境に配慮していることをアピールする狙いだ。
ドイツではクルーズ旅行の人気が高まっており、昨年の利用者数は10年前の3倍の170万人に達した。これを受けて、クルーズ船の数も増えている。
クルーズ船は消費電力を、搭載するディーゼル発電機で賄っている。だが、ディーゼル発電は硫黄酸化物や粒子状物質などの有害物質を排出することから環境負荷が大きい。停泊時には港湾周辺の環境を悪化させるため、地元住民や環境団体から批判が出ていた。
クルーズ旅行独最大手のアイーダはこれを受けて、LNG発電バージの開発をベッカー・マリン・システムズ社に委託。このたび、ハンブルク港で公開した。
「フンメル」と命名された同バージは全長77メートルで、発電機5基を搭載。発電能力は7.5メガワットに上る。ディーゼル発電と異なり、硫黄酸化物、粒子状物質を排出しないほか、窒素酸化物、二酸化炭素の排出量も大幅に少ない。来年からアイーダのクルーズ船に電力の供給を開始するため、同社の船舶が停泊中に黒煙を上げることはなくなる。
環境保護団体NABUはこれを大気の質の改善につながると歓迎している。ただ、出港時や航行時は有害な排ガスを依然として大量に排出することから、触媒と排ガス浄化フィルターの全面搭載を要求している。
アイーダは昨年からこれまでに排ガスフィルターの設置に総額1億ユーロを投じた。競合TUIクルージズもLNG発電バージと排ガスフィルターでアイーダに追従する意向だ。