独中部チューリンゲン州の信用組合であるドイツ・スカートバンク(Deutsche Skatbank)が11月1日付で、個人顧客を対象にマイナス金利を適用した。個人顧客の預金から金利を取り立てるのは同行がドイツで初めて。民間金融機関が欧州中央銀行(ECB)に預け入れる手元資金にマイナス金利を適用する政策を採用したことを受け、同行はその負担を顧客に転嫁する意向だ。
ドイツ・スカートバンクがマイナス金利を適用するのは、預金を自由に引き下ろせる振替口座(Girokonto)とコール預金口座(Tagesgeldkonto)。振替口座で200万ユーロ超、コール預金口座で50万ユーロ超の預金を対象にするとしており、影響を受けるのは富裕層に限られる。
コール預金は自由に預金を引き出せるにもかかわらずこれまでは比較的金利が高かったため、人気の高い金融商品だった。だが、ECBが歴史的な低金利政策を続けていることから、コール預金の金利も低下。金融コンサルティング会社FMHフィナンツベラートゥングの情報として『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が報じたところによると、コール預金の平均金利は現在0.6%弱で、コメルツ銀行とポストバンクではそれぞれ0.05%、0.15%に過ぎないという。
ECBは6月、中銀預金金利をゼロからマイナス0.1%に引き下げ、9月にはマイナス幅を0.2%に拡大した。これを受けて、企業の預金にマイナス金利を適用する動きは出ていたが、個人顧客に対してそうした措置を取る銀行はこれまでなかった。
FMHのオーナーであるマックス・ヘルベルト氏はFAZ紙に、「銀行は現在、預金を自由に引き下ろせるタイプの口座に多額の資金があることを望んでいない」と述べ、ドイツ・スカートバンクの措置は銀行業界の苦境を象徴しているとの見方を示した。
個人顧客にマイナス金利を適用する動きが今後、広がるかは定かでないものの、大手銀行は追従しない考えのようで、ドイツ銀行とコメルツ銀行はそうした計画がないことをそれぞれ同紙に明らかにした。預金にマイナス金利を適用すると口座解約が殺到するリスクがある。