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2015/4/1

総合 - ドイツ経済ニュース

独GDP予測を大幅に上方修正=5賢人委

この記事の要約

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は3月26日に発表した春季経済予測で、2015年の独国内総生産(GDP)成長率予測を大幅に上方修正した。14年第4四半期の成長率が予想外に高かったほか、ユーロ安と石油価格の大幅下 […]

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は3月26日に発表した春季経済予測で、2015年の独国内総生産(GDP)成長率予測を大幅に上方修正した。14年第4四半期の成長率が予想外に高かったほか、ユーロ安と石油価格の大幅下落を受けたもので、従来予測の実質1.0%から同1.8%へと引き上げた。ただ、今回の予測はウクライナ問題などのリスク要因が悪化しないことを前提としており、状況次第では大きく下振れする可能性を排除していない。

5賢人委は昨年11月に15年の景気予測を発表した時点で、14年第4四半期の実質GDP成長率を前期比横ばいと予想していた。だが、実際には0.7%と極めて大きかった。このため、15年第1四半期~第4四半期のGDPが仮に14年第4四半期と同水準にとどまったとしても(ゼロ成長が続いたとしても)、15年通期のGDPは「統計上のオーバーハング効果(statistischer Ueberhang)」でプラス成長を確保できることになる。

今年のユーロ相場については対米ドルで1ユーロ=1.27ドルを想定していたが、現在は1.10ユーロまで下落。石油価格の急落も予想していなかった。

ユーロと石油のダブル安を受けて経済は拡大基調にあり、鉱工業生産は1月まで5カ月連続で増加。Ifo企業景況感指数も昨年11月以降、上昇が続いている。

5賢人委は今回の予測で、個人消費の成長率を従来の1.5%から2.4%へと大きく引き上げた(下の表を参照)。自動車燃料などの価格低下を受けて家計のゆとりが増えているうえ、欧州中央銀行(ECB)の低金利・量的緩和政策を受けて高額商品を購入しやすい環境にあるためだ。

輸出成長率も従来の3.6%から5.1%に上方修正した。ユーロ安でドイツ製品の価格競争力が高まっていることを受けたもので、GDP成長率に対する外需(輸出-輸入)の寄与度もマイナス0.4ポイントからプラス0.1ポイントへと引き上げた。

インフレ率については従来予測の1.3%から0.3%へと大幅に下方修正した。石油価格の急落を受けて物価が大きく押し下げられているためで、ユーロ圏については前年の0.4%からマイナス0.1%に落ち込むとみている。

同委によると、現在の物価下落は石油価格の低下に伴う一時的なもので、コアインフレ率は安定している。このため、物価の下落と経済の悪化が同時に進むデフレの兆候はないという。

「ギリシャへの過大な譲歩は禁物」

景気のリスク要因としては◇ウクライナとロシアの紛争◇中国の不良債権問題◇金融市場の不安定化と米国の金融緩和終了に伴う新興国からの資金撤退――を挙げた。

ギリシャの財政問題については最終的に解決策で合意が成立し、同国のユーロ圏離脱(グレグジット)は起きないとの見方を示した。仮に同国の財政が破たんしても、欧州経済への影響は限定的だとみている。

一方、ユーロ加盟国がギリシャの財政支援要求に譲歩しすぎると、景気に大きな悪影響をもたらすと警告した。財政・経済状況が厳しい他の加盟国が同様の措置を要求するようになる恐れがあるためだ。そうした政策の緩みが原因でユーロ圏の債務危機が再来すると、景気が回復局面から後退局面に転じる公算が高いという。

5賢人委はギリシャが改革路線に復帰し、経済低迷と財政悪化が続くフランスとイタリアも本格的な構造改革を推し進めれば、ユーロ圏の経済的な見通しは明るくなると強調した。