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2015/4/1

経済産業情報

高効率ガス発電所の稼働停止を運営4社が申請

この記事の要約

ドイツ南部のフォーブルクにあるイルシング発電所第4、第5ブロックの運営事業者4社は3月30日、両ブロックの稼働停止を連邦ネットワーク庁と送電事業者テネットに申請したと発表した。再生可能エネルギー由来の電力を優先的に供給す […]

ドイツ南部のフォーブルクにあるイルシング発電所第4、第5ブロックの運営事業者4社は3月30日、両ブロックの稼働停止を連邦ネットワーク庁と送電事業者テネットに申請したと発表した。再生可能エネルギー由来の電力を優先的に供給する政策と、同電力の増加に伴う電力卸価格の下落を受けて、採算が取れなくなっていることを受けた措置。将来も稼働を続けるには新たな法的枠組みが必要だとしており、そうした措置を取るか申請を受け入れかのどちらかを選択するよう迫っている。現行の法的枠組みを残した状態で申請が却下された場合は裁判も辞さない構えだ。

両ブロックはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電所で、イルシング5は2010年、イルシング4は11年に発電を開始したばかり。発電容量はそれぞれ846メガワット(MW)、550MWと大きく、発電効率も各59.7%、60.4%と世界最高水準に上る。第5ブロック(イルシング5)はエーオン、HSE、マイノバ、N-ERFIEの4社、第4ブロック(イルシング4)はエーオンが単独で運営している。

プロジェクトを立ち上げた当初は将来性の高い事業と目されていたが、11年の福島原発事故で状況が一転した。政府が原発廃止を前倒しするとともに、再可エネ電力を従来型電力よりも優先する政策を打ち出したことで、稼働時間が大幅に減少し、採算が取れなくなったためだ。

4社はこれを受け13年に稼働停止方針を打ち出した。このときはテネットが年おそそ6,000万ユーロを4社に支払う見返りに引き続き稼働することが取り決められた。

この契約が16年3月末で失効することから、4社は今回、同4月から稼働停止することを申請した。両ブロックは現在、電力の一時的な供給不足を補う目的で利用されており、昨年は市場向けに発電した時間が1時間に満たなかったという。

テネットが4社との契約を更新することは難しい。同契約は両ブロックを、現行法(予備発電所政令)に基づいて予備発電所に指定された施設よりも優遇しており、違法性を指摘する声が強いためだ。

4社はこれを踏まえ、稼働停止を申請した。同政令の電力買い取り価格は減価償却が終了し発電コストが低くなった老朽化施設を前提に設定されており、減価償却費と資本コストがかかる新発電所には額が低すぎて採算が取れないためだ。

テネットは4社の申請を却下し、両ブロックを同政令に基づく予備発電所に指定することができるものの、4社はその場合、裁判で争う可能性があるとしている。ただ、同政令を改正して新しい発電所からの電力買い取り価格を引き上げ、その分を需要家に転嫁できるようにすれば稼働停止の必要性がなくなるとも指摘。政府に対応を求めている。