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2015/6/17

経済産業情報

原発廃止が早まる可能性も、核燃料税延長なら採算割れの恐れ

この記事の要約

ドイツの原子力事業者が原発の稼働を政府計画よりも早期に打ち切る可能性を視野に入れ始めた。核燃料税は欧州連合(EU)法に抵触しないとする欧州司法裁判所(ECJ)の判決を受けて、バーバラ・ヘンドリックス連邦環境相が同税の徴収 […]

ドイツの原子力事業者が原発の稼働を政府計画よりも早期に打ち切る可能性を視野に入れ始めた。核燃料税は欧州連合(EU)法に抵触しないとする欧州司法裁判所(ECJ)の判決を受けて、バーバラ・ヘンドリックス連邦環境相が同税の徴収期間を延長する考えを示唆したためだ。原発廃止が前倒しされると、電力需要を国内で賄うことができなくなる恐れがある。

ドイツ政府は2010年、原発の稼働期間を平均12年間、延長することを電力会社に認める見返りとして、核燃料税を導入した。核燃料1グラムにつき145ユーロを課すというもので、11年1月から16年末まで徴収することになっている。

政府は福島原発事故が起きた11年、原発の稼働期間延長を撤回した。その際、核燃料税を廃止しなかったことから、原発事業者は同税が基本法(ドイツの憲法)とEU法に違反するとして提訴した。

ECJは4日の判決で、この訴えを棄却した。これを受けヘンドリックス環境相は、ECJ判決により核燃料税の徴収期間を原発が最終的に廃止される22年まで延長できる可能性が出てきたと発言。その方向で検討する考えを示唆した。

この発言が原子力業界で波紋を呼んでいる。業界団体ドイツ・アトムフォーラムのラルフ・ギュルトナー会長は『南ドイツ新聞(SZ)』に、17年以降の原発稼働計画は核燃料税が徴収されないことを前提にしていると指摘。同税が17年以降も徴収されるのであれば、各原発の採算計画見直しが避けられなくなると述べ、原発廃止が早まる可能性を明らかにした。電力の卸売価格が低迷し、原発の採算が厳しくなっていることは追い打ちをかける。

連邦財務省の広報担当者はSZ紙の問い合わせに「現在の法的立場を変更する計画はない」と回答しており、少なくとも財務省は現時点で核燃料税の延長を考えていないもようだ。