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2015/8/5

ゲシェフトフューラーの豆知識

職場のパソコンで私的なコピー、即時解雇は妥当か

この記事の要約

重大な理由がある場合、雇用主は被用者を即時解雇できる。これは民法典(BGB)626条に記されたルールである。では、職場の業務用パソコンなどを利用して勤務時間中に動画や写真などの私的なコピーを行った被用者はこのルールに基づ […]

重大な理由がある場合、雇用主は被用者を即時解雇できる。これは民法典(BGB)626条に記されたルールである。では、職場の業務用パソコンなどを利用して勤務時間中に動画や写真などの私的なコピーを行った被用者はこのルールに基づいて即時解雇され得るのだろうか。この問題をめぐって最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が7月16日に判決(訴訟番号:2 AZR 85/15)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はザクセンアンハルト州ナウムブルク高等裁判所のIT担当者が雇用主である同州を相手取って起こしたもの。同IT担当者は自らが利用する裁判所のパソコン内に電子書籍、写真、音楽、ビデオなど計6,400種類以上の私的なデータとコピーガード解除用のソフトウエアを保存していたうえ、2010年10月から13年3月にかけて計1,100枚のDVDに焼き付けていた。また、裁判所のプリンターを利用してカラー印刷のCDカバーを作成していた。これらの作業は勤務時間中に行っていた。

DVDへの焼き付けは自分のためだけでなく、同僚の頼みに応じても行っており、職場ではほとんどの者が違法行為との認識を持っていなかった。

この事実を職員面談でつかんだ雇用主は調査を実施。13年4月18日付の文書で原告に即時解雇を通告した。

これを不当として原告が起こした係争で、下級審は原告勝訴を言い渡した。2審のザクセンアンハルト州労働裁判所は判決理由で、(1)問題の行為には原告のほかコピー作成を依頼した同僚も関与しているが、これらの行為のどの部分が原告の責任なのかが明確でない(2)原告だけを即時解雇とするのは不平等だ――などとの判断を示した。

一方、最終審のBAGは2審判決を破棄して、裁判をザクセンアンハルト州労裁に差し戻した。判決理由でBAGの裁判官はまず、私的に入手した画像や音楽を勤務先のパソコンで勤務時間中にコピーすることは即時解雇の理由になりうると指摘。そのうえで(1)同僚のためにコピーを行った場合でも即時解雇は適用され得る(2)問題行動を理由とする解雇では原則的に平等原則は適用されず、原告にコピー作成を依頼した同僚に対しザクセンアンハルト州がどのような措置を取ったかは重要でない――との判断を示した。