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2015/8/19

ゲシェフトフューラーの豆知識

遺族企業年金の「晩婚ルール」は不当な差別か

この記事の要約

企業年金の受給資格がある夫ないし妻が死亡した場合、配偶者は遺族企業年金を受給できる。ただし、多くの企業では被用者の結婚年齢が高い場合、寡婦・寡男となった配偶者に遺族年金を支給しない「晩婚ルール」を採用している。このルール […]

企業年金の受給資格がある夫ないし妻が死亡した場合、配偶者は遺族企業年金を受給できる。ただし、多くの企業では被用者の結婚年齢が高い場合、寡婦・寡男となった配偶者に遺族年金を支給しない「晩婚ルール」を採用している。このルールが一般平等待遇法(AGG)で禁じられた不当な高齢者差別に当たるかをめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4日に判決(訴訟番号:3 AZR 137/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業で働いていた被用者の妻が起こしたもの。同被用者は1947年4月生まれで、妻とは61歳当時の2008年8月に結婚した。同被用者は10年12月に死亡したが、被告は原告である妻に遺族年金の支給を拒否した。60歳以上で結婚した被用者の配偶者には遺族年金を支給しない晩婚ルールがあったためだ。原告はこれが違法な高齢者差別に当たるとして提訴した。

原告は1、2審で敗訴したものの、最終審のBAGは逆転勝訴判決を下した。判決理由で裁判官は、晩婚ルールは年齢を理由とする直接的な差別であり、そうした取り決めを禁止したAGG8条2項の規定に抵触すると指摘。客観的で妥当な理由がある場合は年齢によって異なる取り扱いをすることが認められるとしたAGG10条の規定は適用されないとの判断を示した。

今回の判決により、晩婚ルールを採用してきた企業は同ルールを廃止しなければならなくなった。