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2015/9/16

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委員の研修参加、宿泊費の負担で最高裁判決

この記事の要約

従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)の活動で生じる費用は雇用主が負担しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)40条1項に記されたルールであり、研修費用もそうした費用に含まれる。では雇用主 […]

従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)の活動で生じる費用は雇用主が負担しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)40条1項に記されたルールであり、研修費用もそうした費用に含まれる。では雇用主は宿泊研修の宿泊費用も負担しなければならないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月に下した決定(訴訟番号:7 ABR 26/13)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は空港運営会社の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同事業所委は新人の事業所委員Hを新人向けの研修に参加させる計画について人事担当者から同意を得た。研修期間は2010年12月7日から10日の4日間、ホテルで開催され、追加料金を払えば宿泊も可能だった。Hの自宅とホテルの距離が44キロと比較的短かいことから、人事担当者は毎日、自宅から通うよう伝えた。

Hは当初、宿泊なしの研修参加を申し込んだが変更。11月4日にシングルルームの予約を研修主催者に依頼した。

同主催者は研修の終了後、被告企業に請求書を送付。請求項目のなかには宿泊費314.16ユーロ(税込む)も含まれていた。同社が宿泊は約束と違うとして引き受けを拒否したため、主催者はHに宿泊費を請求した。

原告の事業所委はこれを不服として同社を提訴。宿泊が必要不可欠であることの理由として(1)講習終了後に毎晩、他社の事業所委員や講師とホテルで情報交換することは研修の大きな効用だ(2)研修が行われた12月7~10日は降雪で道路が凍結しており、研修に車で毎日通うことはHにとって負担が大きすぎた――と主張した。

これに対し同社は、Hが宿泊の予約を入れた11月4日の時点で降雪と道路の凍結を予測することはできなかったはずだと反論した。

下級審のケルン州労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、BAGも同決定を支持した。決定理由でBAGの裁判官は、ポイントとなるのは研修期間中の天候と道路のコンディションが悪かったかどうかであり、宿泊予約の時点でそうした状況を予想できたかどうかではないと指摘。研修期間中は降雪で道路が凍結しており、被告には宿泊費用の負担義務があると言い渡した。

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