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2015/9/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

たばこ休憩時間の無給化は可能か

この記事の要約

勤務時間中の喫煙を認める企業は多い。だが、喫煙時間が長ければその分、実質の勤務時間は減少し企業には大きな損失となる。では、たばこ休憩に要した時間を給与から差し引くことは可能なのだろうか。この問題をめぐる係争でニュルンベル […]

勤務時間中の喫煙を認める企業は多い。だが、喫煙時間が長ければその分、実質の勤務時間は減少し企業には大きな損失となる。では、たばこ休憩に要した時間を給与から差し引くことは可能なのだろうか。この問題をめぐる係争でニュルンベルク州労働裁判所が8月に判決(訴訟番号:2 Sa 132/15)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は被告企業の倉庫でフォークリフトの運転手として勤務する社員が起こしたもの。同社では勤務時間中のたばこ休憩を長年、職場の慣行として認めてきたが、雇用主と従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は2012年12月4日、たばこ休憩に関する協定を締結した。同協定には

「喫煙のために職場を離れる場合は最寄りのタイムレコーダーを使って入退出時間を記録する。喫煙は休憩時間中および業務に影響がない限り認められる」

と記されていた。翌年1月1日付で発効した。

記録を開始したところ、勤務時間中に原告社員が取ったたばこ休憩時間は13年1月が210時間、2月が96時間、3月が572時間に上っており、被告企業はその分を給与から差し引いた。差引額は1月が44.41ユーロ、2月が20.30ユーロ、3月が120.96ユーロだった。

原告はこれを不当として、差引額の支払いを求めて提訴。給与からの差し引きを不当とする根拠として、雇用主が被用者に便宜を与え続けると、被用者は便宜を永続的に受けることを期待きるようになるという、民法典151条に基づく権利を提示した。

1審のヴュルツブルク労働裁判所は原告の訴えを退け、2審のニュルンベルク州労裁も1審判決を支持した。判決理由で同州労裁の裁判官は、雇用主が被用者に何らかの便宜(ここでは勤務時間中の有給のたばこ休憩)を与える場合は、その前提として便宜の実態(ここではたばこ休憩時間)を知っていなければならないと指摘。被告企業は13年1月にタイムレコーダーによる喫煙時間の記録を社員に義務づけるまでは喫煙時間がどの程度の長さであるかを把握しておらず、被用者には有給喫煙の便宜を永続的に期待する権利が発生していないとの判断を示した。

裁判官はまた、記録を義務づけたことで勤務時間中の喫煙が1日当たり60~80分に達していたことが判明したことにも言及。喫煙のために被用者が勤務時間中に毎日60~80分も仕事をしないことを、雇用主は認める義務がないと言い渡した。

最高裁への上告は認めなかった。

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