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2015/10/28

ゲシェフトフューラーの豆知識

年次有給休暇の権利で最高裁判決

この記事の要約

すべての被用者は年次有給休暇を取得する権利がある。これは有給休暇法(BUrlG)1条に記されたルールであり、有給休暇日数は週6日勤務で24日、同5日で20日、同4日で16日となっている(同3条)。週当たり1日の勤務で年4 […]

すべての被用者は年次有給休暇を取得する権利がある。これは有給休暇法(BUrlG)1条に記されたルールであり、有給休暇日数は週6日勤務で24日、同5日で20日、同4日で16日となっている(同3条)。週当たり1日の勤務で年4日の有給が与えられる計算だ。

ただ、ケースによっては年次有給休暇日数が削減されることがある。1つは、有給休暇の取得権が発生しない勤務開始後6カ月以内に被用者が退職した場合で、有給休暇は雇用関係のあった期間についてひと月につき年次有給休暇の12分の1の日数があてがわれる(同5条1項b)。年次有給休暇が24日で、雇用関係が3カ月であれば6日ということになる[(24÷12)×3]。また、有給休暇を取得できる被用者であっても、上半期中(6月末以前)に退職した場合は同じルールが適用される(同5条1項c)。

前置きが長くなったが、これらのルールに関する係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が20日に判決(訴訟番号:9 AZR 224/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は2009年1月1日から被告企業に勤務していた元社員が起こしたもの。週5日勤務で、年次有給休暇の日数は26日だった。

同社員は自ら申し出て12年6月30日(土)付で被告企業を退職したものの、同年6月21日に被告と新たな労働契約を結び7月2日(月)から同社で再び働いており、実質的には同社での勤務にブランクはなかった。

原告は10月12日付で即時解雇を通告された。これを受けてBUrlG7条4項の規定に基づき未消化となっている有給休暇を金銭に換算して支払うことを被告企業に要求。12年に取得した有給休暇が3日だったため、23日(26日-3日)分が未消化だとしてその支払いを請求した。

これに対し被告は、原告は◇上半期中に退職した◇下半期に改めて採用されたため、解雇時点の勤続期間は4カ月未満に過ぎない――と指摘。原告にはBUrlG5条1項bおよびcの規定が適用されるため、雇用関係のなかった11月と12月についは原告に有給休暇の取得権がないとの立場を示し、有給休暇17日分しか支払わないと主張した(26日-3日-6日)。

1審は原告勝訴、2審は同敗訴を言い渡し、最終審のBAGは逆転勝訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、原告と被告の新たな労働契約は以前の労働契約が失効する前の12年6月21日に締結されていたと指摘。そうしたケースでは雇用関係が短期的に中断しても、被用者には年次有給休暇をフルに取得する権利があるとの判断を示した。原告の場合は26日分の取得権があり、実際には3日しか取得していないため、被告は残り23日分を金銭に換算して原告に支払わなければならない。

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