パイロットの身長規制訴訟で和解、最高裁は差別の可能性を指摘

一定基準以上の身長に達していることをパイロットの採用条件とすることは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた差別に当たるとする判決をケルン州労働裁判所が下したことを、本コラムでは以前、紹介した(2014年7月16日号)。この係争はその後、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)に持ち込まれ、このほど和解が成立したので、再び取り上げてみる(訴訟番号: 8 AZR 770/14)。

裁判はルフトハンザのパイロット募集に応募した女性が同社とパイロット養成子会社ルフトハンザ・フライト・トレーニングを相手取って起こしたもの。ルフトハンザは応募者の選考を行い、採用者はルフトハンザ・フライト・トレーニングで訓練を受けることになっていた。

ルフトハンザでは身長165センチメートル未満の者をパイロットとして採用しないことが、労使協定で取り決められている。原告は身長が161.5センチで、同規定を3.5センチ下回っていたため、不採用となった。

原告はこれを受け、女性は平均的にみて男性より身長が低く、ルフトハンザのパイロット採用基準はAGGで禁じられた女性に対する間接的な差別に当たると主張。損害賠償と慰謝料、合わせて13万5,000ユーロの支払いを求め被告2社を提訴した。

2審のケルン州労裁はパイロットの最低身長基準がルフトハンザよりも大幅に低い航空会社があることを指摘。165センチ以上を採用条件とすることには客観的な根拠がなく、違法な間接差別に当たるとの判断を示した。身長165センチ未満の人の割合が男性で2.8%にとどまるのに対し、女性では44.3%と高いことも間接差別の根拠とされた。

同州労裁はルフトハンザとの係争についてのみBAGへの上告を認めた。BAGの審理では裁判官が、同社のパイロット身長規定は間接差別の可能性が高いとの認識を提示。欧州司法裁判所(ECJ)の判断を仰ぐ考えも示したことから、ルフトハンザは拘束力のある判決が出るのを避けるために和解に持ち込んだもようだ。同社は原告に慰謝料1万4,175ユーロを支払う。

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