雇用関係の速やかな解消が避けられないような重大な義務違反行為を被用者が行った場合、雇用主は即時解雇を通告できる。これは民法典(BGB)626条1項に記されたルールである。では、重大な違反行為が1年以上前に行われていた場合もこの解雇ルールは適用されるのだろうか。この問題にかかわる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が昨年11月に判決(訴訟番号:2 Sa 235/15)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判はスーパーの食肉売り場の主任が雇用主を相手取って起こしたもの。同主任は80セント相当の販売用食肉を食べたため、2015年1月20日付で即時解雇を通告された。これに対し同主任は品質チェックのための試食だったとして、解雇取り消しを求める裁判を起こした。
雇用主は原告主任が14年春、女性社員を壁に押し付けたうえで背中とでん部を触るセクハラ行為を行っていたことを、同行為から1年以上経った時点で知った。このため同セクハラを理由とする即時解雇も追加の形で通告した。
原告は1審で勝訴したものの、2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁は逆転敗訴を言い渡した。判決理由で同州労裁の裁判官はまず、販売用食肉を原告が食べた問題に言及。品質チェックのための試食だったとする原告の主張は言い逃れに過ぎず同行為は盗みに当たるとの判断を示したうえで、処分は最低でも解雇予告期間を設定した通常解雇が妥当だとの判断を示した。
セクハラ行為については、解雇通告の1年以上前に起きた事件だがBGB626条2項には、雇用主は被用者の重大な違反行為を知ってから2週間以内であれば即時解雇を通告できる、と明記されているとして原告の即時解雇は妥当だとの判断を示した。
裁判官は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めており、判決は確定していない。