食品小売最大手の買収計画、経済相が正式承認

ドイツのガブリエル経済相は17日、独中堅食品スーパーのカイザース・テンゲルマン(以下カイザース)を業界最大手のエデカが買収する計画を正式承認した。同計画に対しては連邦カルテル庁が寡占化の進展を理由に不承認の決定を下し政府の諮問機関である独占委員会も反対意見を提出していたが、経済相は同合併で生じる市場競争の鈍化よりも雇用維持の方が重要だと強調。独占委の提言に沿わない異例の措置に踏み切った。

カイザースの親会社であるテンゲルマンは2014年10月、カイザースをエデカに売却する計画を明らかにした。カイザースは事業規模が小さく赤字が続いており、単独で生き残るのは不可能と判断したためだ。

カルテル庁はこれを受けて同計画の調査を開始し、15年2月、一部の地域で市場の寡占が強まるほか、商品調達面でも中堅スーパーとメーカーに不当なしわ寄せが出るとして変更を要求。エデカは計画を一部変更したものの、同庁は不十分として4月に不承認の決定を下した。

エデカはこれを受けて、同社がカイザースを買収しなければ大量の雇用が失われるとして経済相の特別許可を申請したため、独占委員会は調査を実施。エデカが買収してもカイザースでの大規模な人員削減は避けられないと指摘した。また、他の企業がカイザース買収に名乗りを上げていることも挙げ、テンゲルマンはカイザースの売却手続きを仕切り直すべきだとの見解を示した。

このため、ガブリエル経済相は同計画を承認しないとみられていたが、カイザースの従業員1万6,000人をエデカが最低7年間、継続雇用することなどを条件に特別許可を出した。

ドイツではエデカ、レーベ、シュヴァルツ・グルッペ(リドルとカウフラント)、アルディの4大勢力がすでに食品小売市場の85%を握っており、今回の買収により寡占化が一段と進むことになる。独占委のダニエル・チンマー委員長は同日、経済相の決定に抗議して辞任した。また、競合レーベは18日、同決定を不服としデュッセルドルフ高等裁判所に提訴した。

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