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2016/4/20

総合 - ドイツ経済ニュース

「財政黒字は再分配でなく投資に」、年金拡充方針を有力研究所が批判

この記事の要約

Ifoなど有力経済研究所は14日に公表した共同作成の「春季経済予測」で、財政収支の黒字化を背景に公的年金の拡充を検討する政府与党の動きを批判した。現在の財政黒字は一時的な要因によるところが大きいと指摘。社会の高齢化が今後 […]

Ifoなど有力経済研究所は14日に公表した共同作成の「春季経済予測」で、財政収支の黒字化を背景に公的年金の拡充を検討する政府与党の動きを批判した。現在の財政黒字は一時的な要因によるところが大きいと指摘。社会の高齢化が今後、加速すると財政は再び厳しい状況に陥るとして、同黒字を将来の財政の負担になる再分配の拡大でなく、成長につながる投資に充てるべきだと提言した。

ドイツの財政は長年、赤字が続いていたが、2014年に黒字転換した。2000年代に実施された構造改革とそれに伴う雇用の拡大、財政健全化に向けた取り組みのほか、ここ数年は欧州中央銀行(ECB)の超低金利政策と、移民の増加による就労者の拡大が大きい。

中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)からなる現在の大連立政権は(1)1991年以前に出産した女性の公的年金受給額を上乗せし、92年以後に出産した女性との格差を是正する(2)公的年金の保険料納付期間が計45年以上の被保険者について支給額の減額なしに年金を受給できる年齢を63歳に引き下げる――方針を政権協定に盛り込み、すでに施行した。これに対しては産業競争力の低下につながるとの批判があるものの、政府与党は現在さらに、◇公的年金保険料を長年、納付したにもかかわらず年金の給付水準が低く生計を維持できない人に対し、税収を財源に支給額を上乗せする◇将来の高齢化の深刻化をにらんで05年に施行された年金支給額の上昇抑制ルールを撤廃する――などを検討している。

春季予測はこうした動きを踏まえ、◇ECBが利上げに転じれば国債の利払いコストが膨らみ財政収支は再び赤字に転落する恐れがある◇移民の純増で緩和されている高齢化の影響はベビーブーマー世代が年金生活に入る20年以降、再び急速に強まる――と指摘。税・社会保険財政が数年後から再び厳しくなることが確実であるにもかかわらず、将来の財政負担を増やすことは誤った政策だと批判した。

現在の財政黒字を活用すること自体には反対しておらず、実物・人的資本への投資を通してドイツの経済的なポテンシャルを高めるよう提言した。特に、急増した難民に対し語学などの教育を施し労働市場に統合することは重要だとしている。

経済予測に関しては、今年の国内総生産(GDP)成長率を前回予測(昨秋)の実質1.8%から同1.6%へと引き下げた。世界経済の減速とそれに伴う企業の投資抑制が響くためで、ドイツ経済は昨年に引き続き、個人消費と政府消費主導で緩やかな拡大が続く。外需(輸出-輸入)は成長の足かせとなる見通し。

インフレ率は今年も0.5%と低水準にとどまる。ただ、石油価格が今後さらに急落することはないため、来年は1.5%に回復するとの見方だ。(表を参照)

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