企業年金の給付原資(Versorgungskapital)に適用される給付利率を雇用主が決定することになっている場合、同利率を低めに設定することは違法なのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が8月30日の判決(訴訟番号:3 AZR 272/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は金属・電機業界の企業を2011年に65歳で定年退職した元社員が同社を相手取って起こしたもの。同社では◇企業年金を12年間支給する◇給付原資に適用する利率は「市場で一般的な利率(marktueblicher Zinssatz)」とする◇同利率は雇用主が決定する――ことを従業員代表の事業所委員会(Betriebsrat)と雇用主が取り決めている。
被告企業は給付利率をドイツとフランスの割引国債(クーポン=利金=がないかわりに額面金額よりも低い単価で発行される国債)の利回りをもとに決定。原告の場合は給付原資およそ36万ユーロに年0.87%の利率が適用された。
これに対し原告は給付利率が低すぎると批判。年3.55%に引き上げることを要求して提訴した。
1審と2審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、給付利回りは雇用主が民法典(BGB)315条に定める「公正な裁量(billiges Ermessen)」の枠内で決定するものだと指摘。被告企業が独仏両国の割引国債の利回りをもとに給付利率を決定したのは、同利率を確実に保証できるようにするためであり、不当でないとの判断を示した。