独化学大手BASFの農業化学部門を統括するマルクス・ヘルト氏は6日、本社所在地ルートヴィヒスハーフェンでの記者会見で、「我々の成長にとって決定的に重要な要因は顧客志向と敏捷性だ」との見解を表明した。農業化学の世界6大メーカーのうち同社を除く5社はM&Aを通して企業規模を拡大しようとしており、BASFはこうした流れに一線を画した格好だ。
農業化学業界では再編の動きが活発化している。市場環境の悪化を受けて事業規模拡大の必要性が高まっているためで、米化学大手ダウ・ケミカルとデュポンは昨年12月、合併したうえで素材、特殊製品、農業化学の3分野に分社化することで合意した。また、スイスのシンジェンタは今年2月、中国の大手化学メーカー中国化工集団(ケムチャイナ)の買収提案受け入れを表明した。独バイエルは種子大手の米モンサントを株式公開買い付け(TOB)で買収する考えで、モンサント経営陣と協議を進めている。
BASFはこれらのM&A計画が最終的に実現すると考えているものの、独禁当局から一部事業の放出を命じられると予想しており、ヘルト氏はそうした事業の買収を狙っていることを明らかにした。ただ、市場で長期的に生き残るために必要な事業規模をすでに確保済みと判断していることから、競合大手のような大規模なM&Aは行わない考えだ。