ライフサイエンス大手の独バイエル(レバークーゼン)は20日、すべての事業部門で売上高と利益率が中期的に上昇するとの見通しを明らかにした。同社は農業化学大手の米モンサントを買収することで14日に合意。これを受け米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から信用格付けを引き下げられており、財務力の向上をアピールし市場の懸念を払しょくする考えだ。
バイエルの農業化学部門バイエル・クロップサイエンスとモンサントの2015年の売上高は計231億ユーロで、売上高営業利益率(EBITDAベース、調整済み)は約27%だった。今後は為替と事業の売買を除いた実質ベースの売り上げで市場を上回る伸び率を予想。売上高営業利益率(同)についても買収から4年目以降、30%超に上昇するとみている(15年:約27%)。農薬に強いバイエルと種子に強いモンサントは補完性が高いうえ、開発中の新製品にも期待が持てるとの立場だ。
処方薬部門の15年の売上高は153億800万ユーロだった。同社は18年末まで年平均6%程度の成長を予測。18年の売上高営業利益率(同)も15年の30.1%から32~34%に上昇するとみている。
同部門の成長をけん引するのはバイエルが最重視する特許薬の新製品5種類(「イグザレルト」「アイリーア」「スチバーガ」「ゾフィーゴ」「アデムパス」)で、ピーク時の合計売上高見通しを従来予測の「75億ユーロ以上」から「100億ユーロ以上」へと大幅に引き上げた。特に経口抗凝固薬イグザレルトと眼科薬アイリーアで上方修正幅が大きく、それぞれ約35億ユーロから50億ユーロ以上、15億ユーロ以上から25億ユーロ以上へと引き上げた。
開発中の医薬品6種類(「Vericiguat」「Finerenone」「Vilaprisan」「BAY-1841788」「Anetumab Ravtansine」「Copanlisib」)にも大きな期待をかけており、ピーク時の売上高が計60億ユーロ以上に達するとみている。
S&Pは15日、バイエルの格付けを従来の「BBB+」から「BBB」へと引き下げた。「モンサントの難しい事業環境は少なくとも1年間は改善しない」との見通しを根拠としている。