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2016/9/28

総合 - ドイツ経済ニュース

コネクテッドトラック用システムをVWとダイムラーが公開

この記事の要約

独北部のハノーバーで22日に開幕したIAA国際商用車ショーで、フォルクスワーゲン(VW)とダイムラーがそれぞれコネクテッドトラックのシステムを初公開した。トラック業界は付加サービスの提供が大きな意味を持つ時代へと突入しよ […]

独北部のハノーバーで22日に開幕したIAA国際商用車ショーで、フォルクスワーゲン(VW)とダイムラーがそれぞれコネクテッドトラックのシステムを初公開した。トラック業界は付加サービスの提供が大きな意味を持つ時代へと突入しようとしていることから、両社とも利用する運送会社や競合企業を自陣営へと迅速に取り込み、競争で優位に立つ考えだ。

VWは「RIO」というクラウドベースのシステム、ダイムラーは「フリートボード」というシステムを公開した。両システムには大きな共通点が2つある。

1つは競合ブランドのトラックにも搭載できるオープンプラットフォームとしている点だ。運送会社は通常、複数メーカーの車両を運用しており、特定メーカーの車両でしか使えないシステムでは広く普及しないという事情が背景にある。VW商用車部門のヨアヒム・ドレース取締役(MANトランク・アンド・バス社長)は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に、「このシステム(RIO)を搭載する車両が増えれば増えるほど、この技術は運送業界の日常に早く浸透する」と述べ、競合メーカーに先駆けてRIOを市場投入する意義を説明した。ダイムラー商用車部門のヴォルフガング・ベルンハルト社長も『ヴェルト』紙に、「完成度が80%のソリューションであっても市場に1番で投入することは、完成度150%のソリューションを時機を逸して投入するよりも重要だ」と明言した。

両社は米IT大手アップルと同じ事業モデルを採用する点でも共通している。アップルはスマートフォン本体を販売するものの、スマホで使うアプリは外部の事業者が提供する方式を採用。VWとダイムラーもコネクテッドトラックのシステムを提供するものの、アプリは外部の企業が開発する。顧客の運送会社はアプリストアから必要に応じてダウンロードを行い利用することになる。

VWのRIOではすでに、運送ルート上の空き駐車場を知らせるアプリ「パークヒア」と、トラックの積載能力にどの程度のゆとりがあるのかを瞬時に把握し、積荷の量を可能な限り増やすアプリ「ロードフォクス」が開発されている。これらのアプリを使うと走行や輸送の無駄が減るため、燃料節約や環境負荷の軽減、渋滞緩和につながる。

VWはRIOを来年初頭以降に販売するMANの車両に標準装備する。ドレース取締役はRIOに伴う売上規模について、2018年には1,000万ユーロのケタ台に乗るとの予想を示した。

一方、コンサルティング大手のベインが欧州10カ国の運送会社など6トン以上のトラックを運用する企業600社強を対象に実施したアンケート調査によると、トラック購入の際に最重視する要因として回答が最も多かったのは、購入額(イニシャルコスト)とランニングコストを合わせた「総保有コスト(TOC)」で、33%に上った(グラフ参照)。事業規模が大きい企業ほどイニシャルコストよりもTOCを重視する傾向が強い。

「デジタルサービス」との回答は4%にとどまった。ただ、同サービスがランニングコストの圧縮につながることが鮮明になれば、購入決定の重要な要因となる可能性は高く、ベインの調査担当者は、トラックメーカーにとって競合との差別化の大きな武器になるとの見方を示した。