雇用主は大規模な解雇(Massenentlassung)を実施する前に、連邦雇用庁(BA)に計画を通知しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)17条1項に記されたルールである。どの程度の人数が大規模な解雇に該当するかも明記されており、従業員数が21人~59人の企業では6人以上となっている。
同2項には大規模解雇に関する情報を従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)に適切な時期に文書で開示しなければならないとも記されている。開示しなければならない情報は解雇の理由、解雇の対象となる被用者の数とその職業グループ、解雇の実施時期、選別基準、解雇手当の計算基準などだ。雇用主と事業所委はこられの情報に基づいて協議を行い、解雇対象となる従業員が被る経済的な損失を相殺ないし緩和するためのリストラ計画(「社会的計画」と呼ばれる)を策定する。
このKSchG17条2項に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が22日に判決(訴訟番号:2 AZR 276/16)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は空港で乗客向けサービスを請け負っていた企業を相手取って女性社員Aが起こしたもの。同社は唯一の委託元から業務委託を2015年3月末付けですべて打ち切ることを通告された。
雇用主はこれを受け、KSchG17条2項の手続きを14年12月に開始したものの15年1月、全社員を3月末付で解雇することを自らの意志で決定。BAに解雇計画を通知した。
解雇計画に対しては複数の社員が無効確認を求める裁判を起こし、1審の裁判官は、被告雇用主はKSchG17条の手続きに違反したとして、解雇無効を言い渡した。
雇用主はこれを受けて、KSchG17条2項に基づく事業所委員会との協議手続きを6月に再び開始した。ただ、3月末で停止した事業を再開するためには賃金の引き下げが避けられないと判断。その旨を同委に伝えたところ、協議を拒否されたため、雇用関係が残っている社員を改めて全員、解雇した。
原告Aはこれを不当として提訴し、2審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所で勝訴した。これを不服として被告は上告。最高裁のBAGは原告の逆転敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、事業所委員会がリストラ計画策定の協議に応じようとしない場合、雇用主は同委との協議手続きが終了したとみなすことができるとの判断を示した。BAへの解雇計画の通知も適正に行っており、解雇は有効だとしている。