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2016/10/5

総合 - ドイツ経済ニュース

国際経済統合の弱体化に警鐘=有力経済研 インフレ率は来年1.4%まで回復=有力経済研

この記事の要約

Ifoなど有力経済研究所は9月29日に公表した共同作成の「秋季経済予測」で、ドイツ経済は安定成長が続いているものの、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や少子高齢化の進展など大きなリスク要因を抱えていると指摘。政府 […]

Ifoなど有力経済研究所は9月29日に公表した共同作成の「秋季経済予測」で、ドイツ経済は安定成長が続いているものの、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や少子高齢化の進展など大きなリスク要因を抱えていると指摘。政府に対し適切な対応を取るよう促した。

有力経済研究所は春と秋の年2回、「予測」を共同作成して政府に提出している。今年4月の「春季予測」公表の時点では未確定だった英国のEU離脱が6月の国民投票で確定したことから、秋季予測(以下:予測)はこれがドイツ経済にもたらす影響を分析した。

予測はブレグジット決定を、保護主義など経済の国際統合を弱める潮流の1つと位置づけたうえで、こうした動きが他の地域にも広がると、世界経済の成長のポテンシャルは低下すると指摘。世界の経済統合から大きな恩恵を受けるドイツにとって看過できない傾向だとして、これに抗する働きかけを行うよう政府に要求した。

ブレグジットそのものに関しては現時点で企業投資の深刻な足かせになっていないものの、EU離脱交渉が難航すると英国経済が悪化し、ドイツの対英輸出と国内投資が大きな影響を受けるとの見方を示した。

予測は現政権が成長よりも分配優先の政策を続けている点を前回予測に引き続き批判した。少子高齢化がドイツ経済にもたらす長期的な影響を緩和するためには、年金などの分配分野からインフラや教育など生産性の上昇につながる分野に財源を振り向けることが必要だとしている。

今年の国内総生産(GDP)成長率に関して春季予測の実質1.6%から1.9%へと引き上げた。春季予測には予想外に好調だった第1四半期(1~3月)のGDP統計が反映されておらず、これを加味したため上方修正となった。第2四半期は成長率が鈍化。第3四半期はさらに鈍ったと予測はみている。

インフレ率については今年も0.4%と低水準にとどまるものの、物価を強く押し下げてきた石油価格が底を打ったため、来年は1.4%まで回復するとの見方だ。ただ、これに伴い購買力の拡大が頭打ちとなることから、個人消費の伸び率は今年の実質1.8%から1.3%へと低下するという。(下の表を参照)