職場環境に悪い役員の解任を事業所委は要求できるか

従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)は、職場の良好な環境・雰囲気(Betriebsfrieden)を著しく損なう被用者の解雇ないし異動を雇用主に要求することができる。これは事業所体制法(BetrVG)104条に明記されたルールである。では、取締役など経営側の役員が職場環境を悪化させた場合、事業所委はこのルールを根拠に当該役員の解任を要求できるのだろうか。この問題をめぐる係争でハム州労働裁判所が8月に下した決定(訴訟番号:7 TaBV 11/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は機械メーカーを相手取って同社の事業所委員会が起こしたもの。同社の取締役Lは事業所委に対し不適切な情報を何度も伝えた。人事に関しては少なくとも3度、意図的に虚偽の情報を伝達した。

これを受け同委は協業の前提となる信頼関係が回復不能なまでに損なわれたとして、Lの解任を雇用主に要求。これが拒否されたため提訴した。

1審のボーフム労働裁判所は原告の訴えを棄却し、2審のハム州労裁も同様の判断を示した。決定理由で同州労裁の裁判官は、BetrVG104条の解雇・異動要求規定は被用者を対象としたもので、経営側の役員には適用されないと言い渡した。抗告は認めなかった。

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