「ガソリン・ディーゼル車を実質禁止に」=独上院が欧州委に提言

2016年10月12日発行 No.1110号

ガソリン車やディーゼル車など温室効果ガスを排出する現在主流の乗用車を2030年までに、欧州連合(EU)域内で販売できなくする政策の検討を欧州委員会に促す決議を、独16州の政府代表で構成される連邦参議院(上院)が9月23日に行っていたことが分かった。決議には2大政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)が政権を握る州も一部が賛成票を投じており、自動車の排ガス規制でドイツが将来、強硬な立場へと転換する可能性が出てきた。週刊誌『シュピーゲル』が報じた。

同院は決議で、EU加盟国の車両・燃料税のあり方を見直し、遅くとも30年からはゼロエミッションの無公害車のみが新規登録されるようにすることを、欧州委に提言した。背景には20年以降の温暖化対策を定めた「パリ協定」が昨年12月に採択され11月に発効することがある。決議は「EU域内の交通セクターで2050年までにエミッションフリーをほぼ実現する」とした欧州委の目標を達成するためには30年までに新車をすべて無公害車とすることが必要だと強調している。

ドイツのアレクサンダー・ドブリント交通相(CSU)は同決議について「今後14年でエンジン搭載車(新車)を全廃するのは非現実的だ」と述べ、否定的な見解を表明した。閣僚で同決議を支持するのはバーバラ・ヘンドリックス環境相(SPD)に限られており、現政権が連邦参議院と同様の要求をEUに突きつける可能性はほとんどない。

ただ、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題発覚以降、ディーゼル車の市内乗り入れ禁止などを求める声が大都市で強まるなど、エンジン車を取り巻く環境は悪化している。

EUでは人体に悪影響をもたらす大気汚染物質の制限値が設定されており、ドイツの各都市は順守に向けた取り組みを行っている。それにもかかわらず窒素酸化物(NOx)の許容濃度を上回り続ける都市が多い。基礎自治体の全国組織であるドイツ都市会議はこれについて、VW製品に限らずディーゼル車の排ガス値が台上試験と実際の走行とで大きく異なっていることを問題視。多くの大都市でNOxの許容値を順守できないのは、自動車メーカーが実際走行の数値を大幅に下回る排ガス値を公式値として提示してきたことが原因だと批判している。許容値違反が解決されないことは認められず、独南部のミュンヘンに関しては行政裁判所が7月、1年以内に遵守できるようにすることを命じた。

こうした事情を反映し、乗用車新車登録に占めるディーゼル車の割合はここ数カ月、低下傾向にあり、9月は44.6%と前月から0.7ポイント下落。1月(48.7%)に比べると4.1ポイント落ち込んだ。

環境政党の政権入りが大きな焦点に

ドイツの自動車メーカーは大型車に強いことから、ドイツ政府はこれまで車両の排ガス規制に消極的な立場をとってきた。だが今回の連邦参議院決議は、地方レベルでは主要政党も排ガスに厳しい姿勢を取るようになってきたことを示唆している。このため、将来の政権が舵を大きく転換する可能性は排除できない状況だ。

主要政党では環境重視の緑の党がディーゼル車とガソリン車の新車登録を30年から禁止する政策案を9月に打ち出した。11月の党大会で正式決定する予定。

同党は現在、野党であるものの、来年秋の連邦議会(下院)選挙で政権入りすることは十分にあり得る。その場合は同政策を政権協定に盛り込むことを強く求めるとみられる。

自動車業界はこうした流れを警戒しており、独自動車工業会(VDA)のマティアス・ヴィスマン会長は「政治の役割は(無公害車普及の)枠組み条件を作り出すことであり、技術の進歩を指図することではない」と批判した。

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