重度の障害者の公的年金支給開始年齢は健常者に比べ2年早く、現在は63歳となっている。このため、繰上げ受給(早期受給)が可能な年齢も早く60歳から受け取ることができる。では、企業年金(Betriebsrente)を減額なしで満額受給する資格を健常な被用者の年金支給開始年齢である65歳に設定することは、重度の障害者に対する不当な差別に当たるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が13日に判決(訴訟番号:3 AZR 439/15)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は2013年4月末に60歳で早期退職した重度の障害者が勤務先だった企業を相手取って起こしたもの。
同社では以前、公的年金を受給する退職者に企業年金を例外なく満額支給していたが、2001年12月の社内協定でこれを変更。65歳の達する前に退職した被用者への支給額を1カ月繰り上げるごとに0.4%減額するルールを導入した。
このルールに従い原告の企業年金支給額が減額されたため、原告は一般平等待遇法(AGG)で禁じられた障害者差別に当たるとして提訴。満額支給を要求した。
2審のヘッセン州労働裁判所は原告の訴えを退け、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、障害者であることが減額の理由になっていないうえ、65歳未満で退職すれば健常な被用者も減額されることを指摘。被告企業の企業年金ルールはAGG3条で定義された直接的な差別(unmittelbare Benachteiligung)にも間接的な差別(mittelbare Benachteiligung)にも当たらないとの判断を示した。
ただ、01年12月の支給ルール変更に妥当な根拠があったかどうかを下級審は審理しなかったとも指摘。裁判をヘッセン州労裁に差し戻した。この点を吟味して判決を下すよう命じている。