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2016/10/26

総合 - ドイツ経済ニュース

経済省が異例の措置、中国資本の独社買収で承認撤回

この記事の要約

半導体製造装置の有力メーカーである独アイクストロンは24日、中国の投資会社・福建芯片投資基金(FGC)が同社を買収する計画への承認をドイツ経済省が取り消し再審査を行うことを明らかにした。独当局の承認撤回は異例で、国外から […]

半導体製造装置の有力メーカーである独アイクストロンは24日、中国の投資会社・福建芯片投資基金(FGC)が同社を買収する計画への承認をドイツ経済省が取り消し再審査を行うことを明らかにした。独当局の承認撤回は異例で、国外からの投資にブレーキをかける保護主義的な措置だとの批判も出ている。

アイクストロンは昨年末、中国の半導体大手・三安光電から大規模なキャンセルを受けて経営が大幅に悪化。今年5月にFGCへの身売りを決めた。

FGCは独子会社グランド・チップ・インベストメント(GCI)を通した株式公開買い付け(TOB)でアイクストロンを買収する計画で、14日には同株59.97%を確保し、TOBの成立条件である同50.1%を上回ったと発表した。

独経済省は同計画を9月8日に無条件で承認したが、今月21日になって取り消しと再審査をFGCに通告した。GCIの25日付プレスリリースによると、独政府はアイクストロンが軍事分野の技術を持っているとの情報を取得したとして承認を撤回。貿易法に基づいて買収計画を審査する。貿易法には安全保障に関係する独企業の資本25%超をEU域外の企業が取得することを禁止・制限できるとの規定がある。

FGCのアイクストロン買収計画をめぐっては三安光電が資金面で支援していることが最近になって発覚しており、これが影響した可能性もある。

ただ、経済省が承認撤回という異例の措置を取った背景はより深いもようだ。広報担当者はメディアの問い合わせに対し「ガブリエル経済相は(個別事案である)アイクストロンの件を超えた次元で、(外資による)買収にオープンでない国々とどのように付き合っていくべきかをよく考えなければならない、と何度も示唆してきた」と回答した。

経済省は10月中旬、外資による自国企業への出資を制限するための政策案「欧州連合(EU)レベルでの投資検討のための提案概要」を関係省庁に送付した。EU域内企業の議決権25%超を域外企業が取得しようとしても、加盟国政府が拒否権を行使できるという内容。具体的には出資が◇外国政府の産業政策に基づいている◇外国政府の補助金を受けて行われる◇国営・半国営企業によって行われる◇EU企業の市場参入を制限している国からの直接投資――に該当する場合、加盟国政府が審査を実施し、必要に応じて不承認とすることをできるようにする内容だ。

FGCの背後に中国政府の影

『中国電子報』の5月の報道などをもとに『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙が報じたところによると、FGCの背後には政府系金融機関である国家開発銀行(CDB)の委託で投資活動を行うファンド(Sino IC Capital)が隠れているという。また、CDBは中国半導体産業の振興に向けた総額190億ユーロの基金を他の国営銀行・企業と共同運営。アイクストロン買収資金の一部は同基金から提供されることになっている。これが事実であれば、アイクストロンに対するFGCのTOBは中国の産業政策に基づいて国が資金を提供する買収に該当することになる。

中国企業では家電大手の美的集団がすでに、独産業ロボット大手クーカのTOBに成功した。ドイツとEUの現行法では同取引を阻止できないことから、美的集団のクーカ買収が当局の承認を経て成立するのは時間の問題とみられる。10日には三安光電が独照明大手オスラムの買収を検討していることを明らかにしており、政府は最先端技術の流出への危機感を強めている。

監査法人アーンスト・アンド・ヤング(EY)の未公開データをもとにFAZ紙が報じたところによると、中国企業が年初からこれまでにドイツで行った買収は計56件で、前年通期を44%上回った。買収総額は124億ドル(取引額が分かっているもののみ)を記録。昨年までの合計額を大幅に上回ったという。

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