被用者がハイリスク妊娠と診断され医師から就労禁止を命じられた場合、当該被用者は雇用主に賃金の支払いを請求できる。これは母性保護法(MuSchG)11条1項第1文に記されたルールである。請求額は懐妊前13週間ないし3カ月間の平均賃金と定められている。では妊娠した新入社員が勤務の初日から就労禁止で仕事ができない場合も同請求権はあるのだろうか。この問題をめぐる係争でベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が9月の判決(訴訟番号:(9 Sa 917/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。両者は2015年11月に労働契約を結び、原告が16年1月1日から勤務を開始することを取り決めた。だが、原告は12月、医師からハイリスク妊娠と診断され勤務できない状態となった。
原告はこれを受けて、1月以降に勤務していれば受給できた賃金の支払いを被告雇用主に要求。これが拒否されたため提訴した。
原告は2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁で勝訴した。判決理由で裁判官は就労を禁止されたハイリスク妊婦の賃金請求権は勤務実績があることを前提にしていないと指摘。勤務実績がなくても雇用関係があれば賃金請求権があるとの判断を示した。
裁判官は最高裁である連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めており、判決は確定していない。