債務返済の遅延抑制ルール、給与遅配にも適用されるか

債務者による報酬支払いが遅れた場合、債権者はそれに伴い発生した損害の賠償支払いに加え、一律40ユーロの支払いを請求できる。これは2014年に民法典(BGB)288条5項として新規導入されたルールで、債務者に支払い期日を順守させる狙いがある。

このルールが給与遅配および給与支給額の不足にも適用されるかをめぐる係争で、ケルン州労働裁判所が11月22日の判決(訴訟番号:12 Sa 524/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

給与はBGB614条の規定に基づき、原則として被用者が実際に労働を行った後に支給されることになっている。このため雇用主は通常、月の初日に前月分の労働の対価として給与を支払う。この支払が1日でも遅れると、被用者は警告状を出すことなしに給与の遅延金利を請求できる(BGB286条2項1)。つまり、他の分野の債権者と同様の権利が認められているのである。

一方、BGB288条5項に定められた一律40ユーロの支払い請求権ルールについては判例が確定しておらず、被用者の給与・賃金には適用されないとの見方もある。今回の裁判では1審でこの見解に基づく判決が下され、原告被用者は敗訴した。

これに対し、2審のケルン州労裁は原告の逆転勝訴を言い渡した。判決理由で同州労裁の裁判官は、同ルールは債務を期日通りに全額支払うよう債務者に圧力をかける目的で導入されたものだと指摘。給与支給に同ルールが適用されなければ、この圧力は生まれず給与遅配が発生しやすくなるとの認識を示した。

裁判官は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めており、判決は確定していない。

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