麻酔薬がドイツで不足、最大手GSKの供給削減で

全身麻酔用鎮痛剤「レミフェンタニル」がドイツで不足している。同薬の最大手メーカーである英グラクソ・スミスクライン(GSK)がドイツ向けの供給を減らしているためだ。事態を重くみた連邦医薬品・医療機器審査局(BfArM)は医師会、製薬業界の代表と4月28日に協議したものの、供給不足解消のメドは立っていない。

レミフェンタニルは鎮痛作用の迅速な発現と消失を実現した麻酔薬で、特に小児の手術に用いられる。GSKの前身企業であるグラクソウエルカムが開発した。現在は6種類の後発医薬品が出ているものの、GSK製の同薬「アルチバ(Ultiva)」はシェアが50%を超える。

GSKの広報担当者は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に、製品需要と市場動向の新しい評価を踏まえ、年初からドイツ向けの供給を減らし、その分を他の国に振り向けていることを明らかにした。利益拡大を目指した措置ではないと強調している。

また、同社には市場ニーズを全面的に満たす義務はないとも主張。6年前から後発医薬品メーカーがレミフェンタニルを製造していることを指摘し、ドイツの病院は必要であればこれらのメーカーから調達すればよいとの認識を示した。

病院には他の麻酔薬を利用するという選択肢もあるものの、鎮痛作用の発現と消失でレミフェンタニルほど効果の高い製品はないという。

医薬品流通事業者がFAZ紙に語ったところによると、医薬品卸会社と薬局はドイツよりも薬価が高い国に医薬品を転売することがある。そうした場合、製造元はドイツへの供給を削減して、供給不足を意図的に引き起こすことがあるという。

与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)のミヒャエル・ヘンリヒ議員(医薬品政策担当)は、GSKはレミフェンタニルの供給制限を通してドイツの薬価規制を緩和させようとしていると批判。医薬品の供給規制を強化すべきだとの立場を示した。独医師会のフランクウルリヒ・モントゴメリー会長は、国レベルの医薬品備蓄制度と供給不足の通報義務を導入すべきだと提唱している。

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