道路通行料の課金システム統一を欧州委が提案

欧州連合(EU)の欧州委員会は5月31日、欧州における人や物資の移動・輸送の近代化に向けたイニシアチブ「ヨーロッパ・オン・ザ・ムーブ」の一環として、安全で環境に配慮した、効率的な道路輸送を実現するための法案を発表した。道路交通における温室効果ガス排出量の削減を視野に、通行料の徴収に際し、走行距離に応じた課金システムに統一することなどを柱とする内容。欧州議会とEU閣僚理事会で法案について検討する。

EUでは国境を越えて通行する重量貨物車の増加に伴い、通過国で燃料を購入しないことによる道路の整備費用負担の不公平が生じ、解決策として1999年に重量貨物車に道路通行料を課金する「ユーロビニエット指令」が導入された。これは特定の道路を走行する際に必要なステッカー状の証紙(ビニエット)を時間単位(日/週/月/年)で購入し、車のフロントガラスに貼り付ける仕組み。しかし、その後は持続可能性の観点から、道路利用に応じた費用負担の仕組みである対距離課金システムへの移行が進み、現在はビニエット方式と対距離課金を導入している国がほぼ同数となっている。

欧州委は加盟国に道路通行料の徴収を強制するものではないが、運用する場合は課金システムを域内で統一する必要があると説明。走行距離に応じて利用者に負担を求めるシステムを導入したうえで、電気自動車など温室効果ガス排出量がゼロの場合は通行料を75%引き下げることを提案している。さらに加盟国は騒音、渋滞、大気汚染の緩和を目的とした費用を通行料に上乗せすることができる。

オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデンなどでは現在、ビニエット方式が採用されているが、新ルールが導入されると対距離課金システムへの変更が義務づけられる。

欧州委は移行期限を大型車で2023年、その他の車両は27年に設定している。乗用車分野でビニエット方式の採用を予定するドイツは同方式導入の数年後に対距離課金システムに切り替えなければならなくなる。

上部へスクロール