フォルクスワーゲン(VW)の高級車子会社アウディ(インゴルシュタット)が同社2番目の電気自動車(EV)モデルをベルギーのブリュッセル工場で生産するとした決定が、ドイツ本国の従業員の間に波紋を広げている。同社は初のEVもブリュッセル工場で生産。中長期的に大幅な需要増が予想されるEVをドイツの工場で製造する計画はこれまでのところないことから、雇用の先行き不安が出ているもようだ。排ガス不正問題の影響でディーゼル車の走行制限論議が起こり、将来の需要減が懸念されることも背景にあるとみられる。
アウディは21日、EV「e-トロン・スポーツバック」を2019年からブリュッセル工場で生産することを明らかにした。同社初のEVであるe-トロンのSUVモデルも同工場で18年から生産することになっており、EVモデルは差し当たり、すべて同工場で製造する計画だ。
アウディの従業員代表であるペーター・モッシュ全体事業所委員長は日刊紙『ヴェルト』に、両モデルはプラットフォームを共有しており、同一の工場で製造することは理解できるとしながらも、ブリュッセル工場に白羽の矢を立てた理由と独工場の今後の見通しを従業員に明確に説明していないことを問題視。従業員の不安を解消するために納得のいく説明をするよう経営陣に要求した。
一方、同社の広報担当者は、アウディが今後、様々なEV、ハイブリッド車を市場投入していくことを指摘したうえで、「もちろんドイツでもEVを生産する」と強調した。ただ、20年に生産開始予定の同社3番目のEVをドイツで生産するかどうかについては明言を避けた。