電機大手の独シーメンスは21日、ロシア企業インターオートマティカ(Interautomatika)から資本を引き上げると発表した。シーメンス製ガスタービンがクリミア半島の発電所に不正流用された事件にインターオートマティカが深く関与していたことが分かったため。クリミアへの発電設備輸出は欧州連合(EU)によって禁止されていることから、シーメンスは事態を重くみており、事件の再発防止策も打ち出した。
シーメンスはロシア企業パワー・マシンズとの現地合弁でガスタービンを製造している。経営権はシーメンスが持つ。
同合弁は昨年、ロシアのエンジニアリング大手テクノプロムエクスポート(TPE)が同国のタマン半島で元受事業者として建設する発電所プロジェクト向けにガスタービン4基を供給した。だが、これら4基は一部改造されたうえでTPEが手がけるクリミアの発電所プロジェクトに流用されていた。EUはロシアのクリミア併合を受けてクリミアへの輸出を規制しており、シーメンス製タービンの横流しはこれに抵触することになる。
インターオートマティカは発電所の制御機器を製造するとともに、関連サービスを展開している。同社は横流しの対象となったシーメンス製タービンの改造を引き受けていたことから、シーメンスは資本撤退を決めた。
シーメンスは横流しを行ったTPE社員の刑事告発も行った。不正流用されたガスタービン4基については販売契約を破棄して買い戻す意向だ。
同様の事件の再発防止に向けては◇ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電するコンバインドサイクル発電所向けに設備を供給するロシア企業へのライセンス供与を打ち切る◇すでにシーメンスと契約を締結しているロシアの国有企業に対する発電所設備の供給を当面、凍結する◇供給した発電所設備の横流しが起きないようチェック体制を構築するとともに取り付け作業はシーメンスの社員が行うようにする――措置を導入する。
ロシア政府は、問題となっているタービンはサンクトペテルブルクにある合弁工場で生産されていることからロシア製品だと指摘。EUの制裁対象に該当しないと主張している。