探偵を使った従業員の監視には妥当な根拠が必要

探偵を使って従業員を監視することは必ずしも違法ではない。例えば従業員が仮病で会社を休んでいる疑いを示す具体的な根拠がある場合は、これに当たる。だが、妥当な根拠がないにもかかわらず監視を行うと、当該従業員に損害賠償の請求権が発生するので注意が必要だ。この問題にかかわる係争でラインラント・ファルツ州労働裁判所が4月に判決(訴訟番号:5 Sa 449/16)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は鉄道車両保守点検サービス会社のK拠点で従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)の委員長が同社を相手取って起こしたもの。同委員長は鉄道労組EGVの組合員でもある。

K拠点の従業員数は200人未満であった。このため、同社には事業所体制法(BetrVG)38条1項の規定に基づいて事業所委員の通常業務(会社本来の業務)を免除する義務はなかったが、同社は2014年の事業所委員選挙まで同委員長の通常業務を全面的に免除し、事業所委の活動に専念できるようにしていた。

だが、同選挙後は免除を取り消したため、事業所委員長との間で争いとなり、最終的に裁判へと発展した。

同社はこの裁判中、探偵を雇って勤務中の事業所委員長を監視した。その事実をEGVがつかんだことから、同委員長は基本法(憲法)で保障された人格権を侵害されたとして、民法典(BGB)823条の規定を根拠に損賠訴訟を起こした。

同損賠訴訟で2審のラインラント・ファルツ州労裁は原告勝訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、被告企業は妥当な根拠がないにもかかわらず原告を監視したと指摘。探偵による監視は事業所委員を不当な待遇などから保護することを定めたBetrVG78条などにも抵触しているとして、被告は原告の人格権を重度に侵害したとの判断を示した。損害賠償1万ユーロの支払いを被告に命じた。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)への上告は認めなかった。

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