職場の予防接種で副作用、雇用主に責任はあるか

職場で行った予防接種で副作用が出た場合、雇用主に損害賠償などの支払い義務は発生するのだろうか。この問題をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月の判決(訴訟番号:8 AZR 853/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は心臓病センターの職員が同センターを相手取って起こしたもの。被告は同センター職員の健康管理業務を外部の開業医に嘱託していた。

同嘱託医は2011年11月2日、全職員に電子メールを送付し、インフルエンザの予防接種を受けるよう呼びかけた。費用は被告の心臓病センターが負担した。

原告職員は呼びかけに応じて病院内で8日に予防接種を受けたところ、副作用が発生したことから提訴。予防接種のリスクに関する適切な説明を事前に受けていなかったとして、慰謝料の支払いを雇用主である心臓病センターに請求した。また、予防接種により今後、発生する物的・非物的な損害の賠償義務が被告にあることの確認も申請した。

一審と二審は原告の訴えを退け、最終審のBAGも同様の判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、予防接種の副作用の説明を被告に義務づける治療契約を原告と被告は締結していないことを指摘したうえで、労使契約からは雇用主に説明義務は発生しないとの判断を示した。

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