従業員アンケートは共同決定権の対象か

従業員の代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)には、労働災害と職業病の予防策および従業員の健康管理策について雇用主と共同で決定する権利(Mitbestimmungsrecht)がある。これは事業所体制法(BetrVG)87条1項7で定められたルールである。では健康管理に関係のある質問項目を含む従業員アンケート調査を実施する場合、事業所委はこれに関与する権利があるのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月の決定(1 ABR 47/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は大学病院グループの子会社である心臓病センターの事業所委員会が同病院グループと心臓病センター(以下:雇用主)を相手取って起こしたもの。

同グループでは従業員の満足度を調べるために定期的に従業員アンケートを行っており、2015年にも実施を計画した。アンケートは匿名、回答選択方式を採用。従業員に回答の義務はなかった。また、委託を受けた外部のP社が実施することになっており、雇用主は調査レポートを受け取るだけで、従業員の回答を直接、知ることはできないようにしていた。

これに対し心臓病センターの事業所委員会は、アンケート項目の中に労働の負荷や残業など健康管理に関する質問が含まれていることを問題視。アンケートを受けて雇用主が実施する施策は同センターに影響をもたらすとして、アンケート調査への同事業所委の関与を要求し、提訴した。また、個々の事業所委員会の代表からなる全体事業所委員会(Gesamtbetriebsrat)は、同アンケートの共同決定権は全体事業所委員会にあるとして裁判に加わった。

最高裁のBAGはこの裁判で、心臓センターの事業所委と全体事業所委の訴えをともに退ける判断を下した。決定理由で裁判官はまず一般論として、アンケートが親会社によって行われる場合は子会社に関与の余地がないと指摘。アンケートに関与できるのはグループ全体の問題で共同決定権を持つ全体事業所委員会であり、各現場の事業所委員会ではないとの判断を示した。

そのうえで、今回のアンケート調査からは仕事上の危険に関する判断と予防措置を引き出すことはできないと指摘。そうした性質のアンケートはそもそも共同決定権の対象にならないとして、個々の事業所委だけでなく全体事業所委員会を関与させないことにも問題はないとの判断を示した。