独銀最大手のドイツ銀行が欧州中央銀行(EBC)の指示を受けて投資銀行事業を清算した場合に発生するコストを試算している。ECBがそうした試算を大手銀行に命じたのは初めてで、波紋を広げている。『南ドイツ新聞』が報じ、同行が追認した。
ECBは支払い能力のある銀行としての同行が資本市場・先物取引の新規事業を突然、終了した場合に同事業の時価がどのように推移するかの試算を命じた。経営破たんに伴う清算コストの試算を要求したものではないものの、ドイツ銀は業績不振が長期化していることから、今回の報道は注目を集めている。
ドイツ銀はメディアの問い合わせに、「(清算コストの試算は)金融業界で一般的に行われていることだ」と回答。特別な作業ではないことを強調した。ECBも、銀行に対しては原則的に様々な課題を与えるとしたうえで、他行にも同様の試算を今後、指示する見通しを明らかにした。
ただ同紙によると、ドイツ銀がそうした試算を他行に先駆けて命じられたのは偶然でないという。同行が積極的に展開する先物取引のリスクを外部から評価するのは極めて難しうえ、ドイツ銀の投資銀行事業の清算が世界の金融システムを不安定化する恐れもあるためだ。同行は試算作業をすでに数カ月、行っている。作業は複雑で多岐に渡るため、結果はまだ出ていない。
欧州連合(EU)はリーマンショックに伴う金融危機のコストを、税金を通して納税者が最終負担したことを問題視し、そうした事態の回避策を策定した。銀行監督の強化はその1つ。欧州中銀は投資銀事業からの撤退コストをドイツ銀が国家補償ないし公的資金支援なしに確保できるかどうかを把握するために今回の指示を出したもようだ。