イラン核合意からの米離脱を独が懸念

イランとの核合意から離脱し新たな制裁の準備に入ると表明した米トランプ大統領の8日の声明が、ドイツの政財界に波紋を広げている。対イラン事業から撤退しなければ制裁を科されると予想されるためだ。独政府が米国の制裁から自国企業を守る有効な手段はなく、ペーター・アルトマイヤー経済相は11日、法的な手立てはないと明言した。

ドイツの対イラン輸出高は昨年30億ユーロ弱だった。対米の同1,110億ユーロに比べると37分の1に過ぎない。米国が新たな対イラン制裁を開始すると、独企業は米国との取引を維持するために対イラン事業を断念するか、イラン事業を継続して米国の制裁を受けるかの選択を迫られることになる。ほとんどの企業にとっては対米取引が対イランより重要なことから、イラン事業の凍結が相次ぐ恐れがある。

トランプ政権はすでに、地球温暖化防止の枠組みである「パリ協定」と環大西洋貿易投資協定(TTIP)など多国間自由貿易協定からの離脱を表明している。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は今回の核合意離脱表明を受けて11日、多国間主義が深刻な危機に陥っていると懸念を表明。トランプ大統領の名指しを避けながらも「各人が自らの望むようにしか行動しないのであれば、世界にとって悪いニュースだ」と批判した。

ドイツはフランス、英国などとともに核合意の堅持方針を示しているものの、メルケル首相は「巨大な経済力を持つ国(米国)が歩調を合わせないのであれば、この合意をそもそもどの程度、維持できるのか」は分からないとも述べており、状況は極めて厳しい。独連邦議会(下院)外務委員会のノルベルト・レットゲン委員長(キリスト教民主同盟=CDU)は独『フォーカス』誌に「米国なしでは維持できない」と言い切った。

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