アイロムグループは16日、完全子会社IDファーマが独バイオ企業エボテックにライセンスを供与することで合意したと発表した。IDファーマのiPS細胞作製技術を用いて新薬候補物質を探索する権利などをエボテックに認め、契約一時金と年間使用料、ロイヤリティを受け取る。取引金額は公表しないことで合意した。
IDファーマが所有するiPS 細胞作製キット「CytoTune(R)-iPS」の使用をエボテックに認める。具体的にはエボテックが◇同キットを用いてiPS細胞を作製する◇それにより得られたiPS細胞を分化させる◇iPS細胞や分化細胞を創薬スクリーニング(大量の候補化合物のなかから目的に合致した候補分子を探索すること)などに用いる――ことについて、欧州特許機構(EPOrg)加盟国を対象に非独占的な権利を許諾した。
CytoTune(R)-iPSはノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授のiPS 細胞作製技術と、ID ファーマのセンダイウイルスベクター技術を融合させる形で開発された。細胞の染色体を傷つけることなく、高効率にiPS細胞を作製できるため、患者由来の血液や組織からiPS細胞と分化細胞を作製することに適している。
エボテックは医薬品の研究開発企業で、製薬・バイオテクノロジー企業、大学などの研究機関と連携した開発を行っている。患者のiPS細胞から作製した分化細胞を用いて新薬候補物質を探索すると、ヒトに対する効果や安全性が研究段階で予測できるため、同社は今回のライセンス取得を医薬品開発の迅速化につなげる意向だ。