新冷媒R1234yfに環境リスク、環境長官が使用禁止とCO2への転換要求

ドイツ連邦環境庁(UBA)のマリア・クラウツベルガー長官は日刊紙『フランクフルター・ルントシャウ』のインタビューで、カーエアコン用の冷媒として欧州連合(EU)で販売されるほとんどの新車に採用されている「R1234yf」は深刻な水質汚染をもたらす恐れがあるとして、使用禁止を提言した。R1234yfは温暖化防止効果が高いうえ、コストも低いことからすべてのメーカーが使用する必要不可欠の冷媒だが、空気に触れて分解されると有害なトリフルオロ酢酸(TFA)が発生。雨とともに地面に落ちて地下水などの水源を汚染する懸念がある。

EUでは温暖化防止策の一環として2013年1月から、従来カーエアコン用冷媒として使われてきたR134aなどの代替フロンに代わり、地球温暖化係数(GWP:二酸化炭素=CO2=の何倍の温室効果を有するかを示す値)150以下の冷媒を使用することが義務づけられた。この基準を満たすのは当時、米ハネウエル・インターナショナルの「R1234yf」に限られていた。その後、R1234yfの引火リスクに懸念を持ったダイムラーがCO2冷媒のカーエアコンを開発したものの、コストがかさむため、同冷媒採用のカーエアコンを搭載するモデルは同社と競合アウディの計3モデルに過ぎない。

R1234yfの使用が増えた結果、大気・水質検査で同冷媒とTFAが検出されるケースが増えている。スイス連邦材料試験研究所(Empa)が昨年チューリヒで実施した定点観測では毎回、検出された。スイスアルプスのユングフラウヨッホにある高度3,580メートルの観測地点でも46%の割合で検出された。

Empaのマルティン・フォルマー研究員は、冷媒は気密性に問題があったり封入が不適切だと漏れ出ることを指摘。漏れ出たR1234yfが空気に触れるとすぐに有害なTFAが発生すると説明した。

UBAのクラウツベルガー長官は「通常の浄化方式では飲料水からTFAを除去できない」として、R1234yfなどフッ素系冷媒の使用禁止を要求した。ドイツの自動車メーカーに対してはCO2冷媒カーエアコンの搭載モデルを増やすことを促している。

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