景気に回復感、対米通商戦争回避で先行き懸念ひとまず後退

2018年8月29日発行 No.1200号

低迷感の強かったドイツの景気が明るさを取り戻してきた。第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)は予想外の高い伸びを記録。8月の企業景況感も大幅に好転して数カ月来の高水準を回復しており、Ifo経済研究所のクラウス・ヴォールラーベ景気調査主任はロイター通信に「強力な国内景気が不安定要因を陰に追いやっている」と明言した。ただ、英国が協定を締結しない状態で欧州連合(EU)から離脱するシナリオがここにきて現実味を増しており、景気の先行き懸念は再び強まる可能性もある。

ドイツの景気指標は今年に入って低迷しており、1月から6月までの製造業新規受注指数は5月を除いてすべて減少した。米トランプ政権の保護主義政策に起因する通商摩擦が最大のマイナス要因となっており、鉱工業生産の伸びも鈍化。景気のソフトデータである企業景況感は下落傾向が続いていた。

だが、連邦統計局が今月発表した第2四半期のGDPは前期比の実質成長率(物価・季節要因・営業日数調整値)が0.5%となり、前期(1~3月)の同0.4%から加速。統計局はこれまで0.3%としていた前期の成長率についても0.4%へと上方修正した。

第2四半期の成長をけん引したのは内需で、0.9%増加した。輸出は0.7%、輸入は1.7%の幅でそれぞれ増加し、マイナスとなった前期からともに拡大へと転じた。

内需では政府最終消費支出と建設投資が0.6%増加。民間最終消費支出(個人消費)と設備投資も0.3%伸びた。(次ページの表を参照)

GDP成長率0.5%に対する項目別の寄与度をみると、内需が0.8ポイントに上ったのに対し、外需はマイナス0.4ポイントと足かせになった。外需が落ち込んだのは輸出の伸びが輸入を下回ったため。内需では在庫調整等が最大の押し上げ要因で、0.4ポイントに上った。民間最終消費支出は0.2ポイントで、3四半期連続で成長率の押し上げに寄与した。建設投資は0.1ポイント。設備投資はプラスマイナス0ポイントで、成長率を押し上げも押し下げもしなかった。

就労者1人当たりのGDP成長率は0.3%で、GDP成長率(0.5%)を下回った。また、就労1時間当たりのGDPは0.7%減となり、2四半期連続で落ち込んだ。

企業景況感9カ月ぶり上昇

Ifoが27日発表した8月のドイツ企業景況感指数(2015年=100)は前月を2.1ポイント上回る103.8と大きく伸び、6カ月来の高水準を記録した。同指数の上昇は9カ月ぶり。内需の堅調のほか、EUと米国が貿易障壁削減で7月下旬に合意し、通商関係の悪化がひとまず回避されたことが大きい。クレメンス・フュスト所長は「ドイツ経済は夏の高気圧のただ中にある」と明言。第3四半期(7~9月)のGDP成長率は前期比で実質0.5%に達し、これまでに引き続き高い水準を維持するとの見方を示した。ヴォールラーベ景気調査部長は今年の実質GDP成長率を現在の1.8%から「1.8~1.9%」へと引き上げる考えを明らかにした。

今後6カ月の見通しを示す期待指数が3.0ポイント増の101.2と特に大きく伸びた。現状判断を示す指数も1.0ポイント増の106.4へと拡大した。

部門別でみると、製造業の景況感指数は7カ月ぶりに好転した。期待指数が大幅に上昇したためで、特に自動車業界で明るさを増した。同業界の期待指数は7月のマイナス10.0からプラス4.9へと大幅に改善している。製造業全体をみても増産計画の企業が増えた。現状判断指数はやや落ち込んだ。

サービス業の景況感指数は大幅に上昇した。期待指数が09年6月以来の高水準に達したことが大きい。現状判断も改善した。景況感は特に観光業界で明るく、「黄金の秋を見込んでいる」(ヴォールラーベ景気調査部長)という。

流通業の景況感指数はやや上昇した。現状判断がやや改善。期待指数はやや落ち込んだ。

建設業の景況感指数はこれまでに引き続き過去最高を更新した。期待指数が大幅改善したほか、現状判断も前月をやや上回った。

「ハードブレグジットの影響は深刻」

一方、英政府は23 日、EU 離脱交渉が不調に終わり、通商協定などがまとまらないまま19 年3 月の離脱期限を迎えた場合の対策をまとめた文書を公表した。実質的な交渉期限である10 月が迫るなか、最悪のシナリオである「合意なき離脱」によって生じる事態を周知することで、企業や国民にメイ首相が掲げる離脱方針への理解を促す狙いがあるものとみられる。

同文書の公表を受けて、ドイツの経済界では警戒感が強まっている。サプライチェーンが寸断されるなど危機的な事態が予想されるためで、独産業連盟(BDI)のヨアヒム・ラング専務理事は『ライニッシェ・ポスト』紙に、「ハードブレグジットの影響は英政府が国民に伝えたよりもはるかに深刻だ」と明言。独化学工業会(VCI)のウツ・ティルマン専務理事は「化学・製薬業界と顧客業界にとってはブレグジット後も英国をEUの欧州化学品庁(ECHA)につなぎとめておくことが極めて重要だ」と述べ、離脱交渉の合意実現に注力するよう求めるとともに、合意なき離脱という最悪のケースに備えるよう加盟企業に促した。ドイツ機械工業連盟(VDMA)のティロ・ブロートマン専務理事は、「企業は念のためにハードブレグジット対策を準備しなえればならない」としながらも、「そうした対策が実行される必要がないことを望む」と強調した。

10月までにEUと英国の合意が実現せず、ハードブレグジットが避けられない状況となると、企業景況感は再び冷え込み、投資活動などにしわ寄せが出る恐れがある。

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