従業員の代表である事業所委員会のメンバーを解雇することは、解雇保護法(KSchG)15条で原則的に禁じられている。事業所委員は職務上、経営者と対立して報復を受けやすい立場にあるためで、解雇が可能なのは即時解雇がやむを得ない「重大な理由」がある場合に限られる。つまり、解雇予告期間を設定した通常解雇は出来ない訳で、解雇のハードルは高い。
一方、事業所体制法(BetrVG)103条1項には、事業所委員を解雇するためには事業所委員会の同意が必要であることが記されている。では、社内(事業所内)に事業所委員が1人しかいない企業が事業所委員を解雇する場合であっても、当該事業所委員の承認を得なければならないのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月25日の判決(訴訟番号:2 AZR 401/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は狩猟・競技用ライフルの販売店の事業所委員が同社を相手取って起こしたもの。原告である同事業所委員は同社で唯一人の事業所委員だった。
原告は被告企業に競合する活動を繰り返し行ったことから、被告は原告の即時解雇を決断。解雇対象である原告の同意を得ることはできないと判断し、事業所委の承認に代わる代替承認を労働裁判所に申請した。この申請は最終的にBAGによって承認されたことから、被告は2016年6月16日付の文書で原告に即時解雇を通告した。
原告はこれに対し、◇事業所委員会(この係争では原告本人)の同意を得ない解雇は無効だ◇即時解雇を正当化するほどの重大な理由も存在しない――として、解雇無効の確認を求める裁判を起こした。
この裁判で一審と二審は原告の訴えを棄却し、最終審のBAGも原告敗訴を言い渡した。判決理由でBAGの裁判官は、解雇の当事者である原告に解雇の承認を要請することは法的にできないと指摘。こうしたケースでは事業所委員の解雇の承認を事業所委員会が拒否した場合、雇用主は代替承認を労働裁判所に申請できるとしたBetrVG103条2項の規定が類推適用(analog Anwendung)されるとして、代替承認を労裁に申請した被告の行為は正しいとの判断を示した。
また、即時解雇を正当化するほどの重大な理由がないとする原告の主張についても、競合活動は勤務先企業に損害を与ええる行為であり、即時解雇の重大な理由に該当すると言い渡し、訴えを退けた。