スイス特殊化学大手のクラリアント(ムッテンツ)は18日、筆頭株主となったサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)を「戦略安定大株主(strategic anchor shareholder)」とすることなどを取り決めたと発表した。クラリアントはM&A(企業の合併・買収)が活発化している化学業界で単独で生き残るには事業規模が小さいことから、事業規模が大きいSABICと緊密に協働することを決めた。事業再編にも踏み切る。
クラリアントはSABICとの間で今回、◇取締役会の定員を10人から12人へと増やしたうで、新取締役4人をSABICから迎え入れる◇ハリオルフ・コットマン最高経営責任者(CEO)を取締役会会長へと異動する◇SABIC特殊化学部門のエルネスト・オッキエーロ副社長を新CEOとして迎え入れる――も取り決めた。10月16日の臨時株主総会で決議する。
クラリアントは単独での生き残りに向けて米同業ハンツマンとの合併を目指したものの、米投資会社ホワイトテールなど攻撃的な株主の反対を受けてとん挫した。SABICはその後、ホワイトテールなどからクラリアント株24.99%を取得することで合意。独禁審査を経て今月中旬に取得手続きを完了したことからクラリアントとの間で今回の協定を結んだ。
クラリアントは今後、SABICの協力を受けながら事業再編を行い、売上高と収益力を強化していく。最大の目玉は収益力の高い自社の添加剤、高性能マスターバッチ事業とSABICの特殊化学事業の一部を新設する「ハイパフォーマンス材料」部門へと統合するというもので、新設部門の売上高を2021年までに17年の30億スイスフラン(プロフォーマベース)から40億フランへと拡大。営業利益率(EBITDAベース)も19.4%(同)から「24~25%」へと引き上げる。自動車、航空機、電機業界などで軽量素材のニーズが高まっていることから、同社は業績目標を達成できるとみている。
一方、収益力が低いプラスティック・コーティング事業(顔料、汎用マスターバッチ、医療用特殊品)は2020年までに売却する。
同社全体の業績については、21年までに売上高を17年の64億フランから約90億フラン、営業利益率を12.7%から約20%へと引き上げていく。