住宅問題の解決に政府が着手、年37万戸創出へ

2018年9月26日発行 No.1204号

ドイツ政府が住宅問題の解決に本腰を入れ始めた。都市部の住宅不足と家賃高騰が大きな社会問題に発展し、現状を放置すると住宅に住めなくなる人や、長距離通勤を余儀なくされる人が大幅に増える懸念があるためで、政府は今月に入って借家人の権利強化、賃貸住宅の建設促進に向けた法案を相次いで閣議承認。21日には州、市町村、業界団体の代表を官邸に招き、対策を協議した。アンゲラ・メルケル首相は「住宅問題は我々全員に関わる重大な社会問題の1つであり、社会の一体性を保つうえで決定的に重要な事柄だ」と明言した。

ドイツでは住宅不足が深刻化している。政府は新築需要を年35万~40万戸と見積もっているが、昨年の完工件数は24万5,304戸にとどまった。人口流入が続く大都市で賃貸住宅の供給が需要に追い付いていない。

地価の上昇も起きており、首都ベルリンでは過去5年間の上げ幅が345%に達した。

こうした事情を反映し、都市部では家賃が急上昇。インフレ率が低迷しているにもかかわらず、フランクフルトではこの5年間で平均17%高くなった。都市中心部に住めなくなり、郊外へと移転する動きは中所得層にも広がっている。

低所得者向けの社会住宅(公営住宅)が減少していることも、家賃の上昇に拍車をかけている。社会住宅は東西ドイツ統一直後の1999年代初頭時点で290万戸あった。現在はこれが120万戸に減少している。財政再建に取り組む自治体が社会住宅を民間投資家に大量売却してきたことが背景にある。例えば東部の大都市ドレスデンは2006年、保有するすべての社会住宅を17億ユーロで売却した。これにより債務を一掃したものの、そのつけは低所得層が支払うことになった。

不動産会社などの投資家は取得した社会住宅をしばしば近代化する。そのコストは購入コストとともに借家人に転嫁されることから、家賃は大幅に上昇することが多く、移転を余儀なくされるケースは少なくない。

建造物の近代化は一般の賃貸住宅でも行われ、その費用は家賃に転嫁される。このため中所得層の借家人も家計を圧迫されている。

政府は住宅不足に起因する問題の解決に向け、幅広い政策を打ち出した。それらの政策は大きく分けて◇賃貸住宅・マイホームの建設促進・加速◇家賃の急上昇の抑制◇家賃とマイホーム建設費用の助成――の3本柱からなる(下の表を参照)。これらの措置により、年37万戸以上の新築住宅を創出するとともに、「普通の人々が支払える家賃」を実現する考えだ。

ドイツはマイホームの所有率が低く、53%強の市民が借家に住んでいる。このため家賃の上昇には敏感に反応しており、7月のアンケート調査では69%が住宅問題を最も重要な政治課題の1つと回答した。

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