製薬・農業化学大手の独バイエル(レバークーゼン)が動物薬部門の売却を検討しているもようだ。一般医薬品部門の不振や特許薬部門の先行き懸念、米モンサント買収に伴う巨大リスクの抱え込みを受けて事業の見直しを求める投資家の圧力が高まっているためで、化学工業団地運営会社クレンタの持ち分も売却の方向という。金融・産業界の情報として経済紙『ハンデルスブラット』が報じた。
特許薬部門は現在、堅調を保っている。主力製品の販売が好調なためだ。だが、今後は稼ぎ頭の製品の特許が相次いで失効することから、2020年代には同部門の売上高が60億ユーロ以上、目減りする恐れがある。同社が開発中の製品でその穴を埋めるのは不可能とみられることから、提携や買収を通した開発パイプラインの補充が緊急の課題となっている。
一般医薬品部門はこのところ、利益の減少が続き、改善のめどが立っていない。現在は経営の立て直しに向けて新たな事業モデルを検討している最中だ。
バイエルはモンサントを6月7日付で買収した。買収金額は630億ドルと大きく、同社は巨額の有利子債務を抱え込んだ。また、モンサントの除草剤「グリフォサート」は発がん性の疑いを持たれており、バイエルは同社を買収したことで今後、巨額の引当金計上に追い込まれる可能性がある。
バイエルは債務負担が大きいことから、買収など事業の拡大に向けた巨額投資を行えない状況に陥っている。市場の懸念は大きく、経営陣は主要株主の意見を聞きながら事業再編策を作成しているもようだ。
動物薬部門は業績が安定しているものの、事業規模が小さく、すべての事業分野で世界トップクラスの企業になるというバイエルの目標を実現できる見通しはない。売却すれば60億~70億ユーロを確保できることから、経営陣は売却を検討している。
クレンタは元子会社ランクセスとの合弁会社で、出資比率はバイエルが60%、ランクセスが40%となっている。同紙によると、バイエルはクレンタ持ち分の売却に向けて元子会社コベストロと交渉したもののとん挫したことから、現在は投資会社に譲渡する方向という。クレンタの時価総額は20億ユーロ超とみられることから、売却すればバイエルには10億ユーロ以上の収入が入る。