勤務中の社員に競合が引き抜きの電話、違法行為に当たるか

優れた人材を獲得するために競合企業の社員に接触することはごく普通に行われており、その自体に違法性はない。では、競合の社員が勤務中であるにもかかわらず接触することも許されるのだろうか。この問題を巡る係争でフランクフルト高等裁判所が8月に判決(訴訟番号:6 U 51/18)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は全国的に事業を展開する人材派遣会社Aが競合企業Bを相手取って起こしたもの。Bの社員CはAの社員Dを引き抜くために5日間のうちに計7回、電話をかけた。電話はすべてDの勤務時間中に行われた。

A社はこれが不当競争禁止法(UWG)4条4項で禁じられた「競合企業の意図的な妨害」に当たるとしてB社を提訴した。これに対しB社は、Dに接触した際に利用したのはA社の電話やパソコンでなく、Dの私的な携帯電話であり違法性はないと反論した。

二審のフランクフルト高裁はA社の訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、CがDに初めて電話接触した際に、引き抜き目的で電話したことを伝えたうえで関心があるかどうかを尋ねることは許容されるが、2度目以降の電話をDの勤務中に行ったことはA社の業務の妨害に当たると指摘。B社によるDの引き抜き電話は違法だとの判断を示した。Dに接触した際に利用したのがA社の電話やパソコンだったか、それともDの私的な携帯電話であったかは有意義な違いではないと言い渡した。

裁判官は最高裁への上告を認めておらず、判決は確定した。

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