年次有給休暇は被用者に認められた権利であり、その期間は法律で定められている。ドイツの場合は週6日勤務で24日、同5日で20日、同4日で16日となっている。週1日の勤務で年4日の有給が与えられる計算だ。では、育児休暇で働かない期間があった場合、これを有給休暇の算出基準となる勤務日数に算入しなければならないのだろうか。それとも同勤務日数から除外できるのだろうか。この問題を巡る係争で欧州連合(EU)司法裁判所(ECJ)が10月の判決(訴訟番号:C-12/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判はルーマニアのボトシャニ地方裁判所に勤務する女性裁判官が同国を相手取って起こしたもの。同裁判官は産休後の2015年2月4日から9月16日にかけて育児休暇を取得し、勤務をまったく行わなかった。
同年の有給休暇として計35日すべてを消化しようとしたところ、勤務先のボトシャニ地裁は申請を却下した。その根拠として、実際に勤務を行った日数のみが有給休暇の算出基準となる勤務日数にカウントされるとした国内法の規定を指摘。同裁判官が勤務を行わなかった育休期間は有給休暇の算出基準となる勤務日数に算入されないと説明した。
原告はこれを不当として国内の裁判所に提訴。ルーマニアの裁判所はEU法にかかわる問題と判断し、ECJの判断を仰いでいた。
ECJは10月4日に下した判決で、EU域内の被用者には最低4週間の年次有給休暇が保障されているものの、この権利は実際に勤務を行ったことを前提にしていると指摘。原告は育休中に勤務を行っていないため、年次有給休暇からその分を除外するルーマニアの法律はEU法に合致しているとの判断を示した。
病気や産休中など被用者が勤務できない状態にある期間については、有給休暇の算出基準となる勤務日数に算入しなければならないとの判断も示した。