労働・社会保険改革を政府に提言=5賢人委

2018年11月14日発行 No.1211号

政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は7日、メルケル首相に提出した秋季経済予測のなかで、ドイツ経済は大きな課題に直面しているとして、対策に取り組むよう提言した。多国間主義を基調とする戦後の国際経済秩序の揺らぎのほか、少子高齢化の進展に伴う社会の変化に対応することが重要だと指摘。また、2000年代に実施した税制改革の効果が薄れているとして、企業の税負担を軽減するために連帯税の廃止を促した。

一人の女性が生涯に何人の子供を産むかを示す合計特殊出生率は昨年1.57人で、人口の維持に必要な2人を大幅に下回った。平均寿命も男性で78歳強、女性で83歳強と高い。65歳以上の高齢者の数は過去20年間で36.6%増え、人口に占める割合は15.8%から21.4%へと上昇した。この比率は今後、さらに高まっていく。

こうした変化に対応するためには経済が堅調な現在の状況を利用して労働、社会保障分野の改革を推し進めることが肝要だと5賢人委は指摘した。

ドイツでは現在、人材不足が企業の最大の事業リスク要因となっている。この問題に対処するために政府は国外から専門人材を招き入れる移民法の制定作業を進めており、同委はこれを高く評価。さらなる措置として、◇勤務時間の柔軟化や全日制保育施設の拡充を通してパート勤務者が労働時間を増やしやすい環境を整える◇労働時間を柔軟に割り振れるようにするために法改正を行う◇専業主婦の就労促進策を導入する◇年金開始年齢を柔軟化する――などを促した。デジタル技術の活用も労働人口減少対策として重要だとしている。

高齢化に伴う医療費拡大への対策としては、所得水準に応じて保険料の額が決まる公的健康保険に、各被保険者が一律同額の追加保険料を納付する新ルールの導入を提言した。

公的年金の料率と給付水準を2025年まで一定水準に保つことを柱とする政府の年金改革法案に対しては、財政支出の大幅拡大につながり持続可能な政策でないと批判。年金財政を維持するためには受給開始年齢を緩やかに引き上げていく必要があるとして、平均寿命の上昇に合わせて同年齢を引き上げる政策の導入を提案した。

「パテントボックス導入を」

ドイツでは08年の税制改革で法人税率が従来の25%から15%へと引き下げられた。この結果、独東部の支援を目的とする連帯税と市町村に納入する営業税を加えた企業の実効税率は平均38.7%から30%未満へと低下。同国の産業立地競争力は高まった。

だが、それから10年が経過した現在、実効税率引き下げの動きは先進国全体に波及。ドイツで営業税を引き上げる自治体が多いこともあり、同国の実効税率(現在30.2%)は5賢人委が調査した主要32カ国・地域のなかで4番目に高くなっている。

同委はこれを踏まえて税率5.5%の連帯税を全廃するよう提言した。政府は一般世帯が納付する連帯税については段階的に引き下げていき、21年には高額所得者を除き全廃する方針を打ち出しているものの、企業の連帯税については存続させる方向だ。

同委はまた、特許から生じた所得に軽減税率を適用する「パテントボックス」の導入を通した企業の税負担軽減も産業立地競争力の向上につながるとしている。

5賢人委は今回、ドイツの今年の国内総生産(GDP)成長率を春季予測の実質2.3%から1.6%へと大幅に引き下げた。世界貿易の枠組み条件の悪化や国内の生産能力不足が経済の足かせとなっているためで、来年についても1.8%から1.5%へと下方修正した(前ページの表を参照)。

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