同僚の苦情で一人部屋勤務に、業務拒否は正当か

同じ職場で働く社員や職員と頻繁にトラブルを起こす者がいる場合、雇用主は配置転換などを通して別の職場に移すことで対処することがある。では、そうした命令を受けた者がこれを拒否し、勤務を行わなかった場合に解雇することは妥当なのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が6月の判決(訴訟番号:2 AZR 436/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はミュンヘン市の技術部門に勤務する女性建築家が同市を相手取って起こしたもの。同建築家は当初、技術文書担当の管理職として勤務していたが、部下と頻繁にトラブルを起こすことから、同市は調停を行った。それでも効果がなかったことから同女性を管理職から外したものの、職場の雰囲気は一向に改善しなかった。

同建築家の勤務場所を変えてほしいという要請を複数の同僚が提出したことから、市は同建築家の業務分野を変更したうえで、別の場所にある一人部屋のオフォスで働くよう指示した。

同オフィスには机と椅子しかなかったことから、市は同建築家に必要な備品・設備を自ら設置するよう命令。また、電子タイムレコーダーがないことから、始業・終業時間を電子メールで毎日、報告するよう命じた。

原告建築家はこうした措置を不当として勤務を拒否したため、市は警告処分を出した。それでも拒否を続けたことから、2014年8月8日付の文書で即時解雇を通告。裁判で即時解雇が認められない可能性があることを踏まえて、解雇予告期間を設けた通常解雇(12月末付)も通告した。

これを不当として原告が起こした裁判で、一審と二審は原告勝訴を言い渡したものの、最終審のBAGは二審判決を破棄。業務命令が不当でない限り被用者には雇用主の指示に従う義務があり、そうした指示に従わずかたくなに業務を拒否することは正当な解雇理由に当たるとの判断を示したえで、裁判をミュンヘン州労働裁判所に差し戻した。

今回の係争の争点に関しては◇同じ部署の同僚から苦情がある被用者の勤務場所を変えることは適切ないし必要であり得る◇一人部屋のオフィス勤務を命じたミュンヘン市の措置は、外部との連絡を可能とするネット環境が同オフィスにあることから、原告を「孤立させる不当な措置」に当たらない◇勤務しているかどうかを確認するために始業時間と終業時間を毎日、メールで送信するよう命じることに問題はない――などの判断を示した。ミュンヘン州労裁はこの判断をもとに判決を下すことになる。

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