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2018/12/12

総合 - ドイツ経済ニュース

CDUの新党首は親メルケルの幹事長、党勢回復が課題に

この記事の要約

中道右派の独与党キリスト教民主同盟(CDU)は7~8日の2日間、ハンブルクで党大会を開き、アンゲラ・メルケル党首(首相)に近い立場にあるアンネッテ・クランプカレンバウアー幹事長(56)を新党首に選出した。メルケル氏に次い […]

中道右派の独与党キリスト教民主同盟(CDU)は7~8日の2日間、ハンブルクで党大会を開き、アンゲラ・メルケル党首(首相)に近い立場にあるアンネッテ・クランプカレンバウアー幹事長(56)を新党首に選出した。メルケル氏に次いで同党2人目の女性党首となったクランプカレンバウアー氏は、難民問題をきっかけに低下した党の人気を回復させることが最大の課題となる。

党首選にはクランプカレンバウアー氏と保守派のイエンス・シュパーン保健相(38)、フリードリヒ・メルツ元院内総務(63)の3人が出馬した。一次投票で過半数を制する候補がいなかったことから決選投票となり、クランプカレンバウアー氏は999票中517票(51.75%)を獲得。メルツ氏(48.25%)を僅差で破って新党首に就任した。

同党はメルケル首相の判断で実施した難民受け入れ政策をきっかけに人気が低下し、右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に有権者の票が大量に流出した。難民政策で姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)と対立したこともマイナスに働き、両党は昨年秋の連邦議会(下院)選挙と今年の州議会選挙でともに大敗した。メルケル首相はこれを受けて10月、党首辞任の意向を表明していた。首相職からも任期終了をもって退く考えのため、順調にいけば2021年秋に首相を退任する。議会が早期解散された場合は引退が前倒しされる。

クランプカレンバウアー新党首は政策面でメルケル首相のリベラル路線を基本的に継承する見通しだ。税・社会保障政策では中・低所得層の負担軽減や、45年以上働いた年金受給者が生活保護受給者へと転落することの阻止方針を打ち出しており、中道左派の社会民主党(SPD)との連立政権に大きな亀裂が走る可能性は低い。

ただ党首選の決選投票では、小さな政府や自助といった競争促進型の政策を主張するとともに、保守的な価値観を重視するメルツ候補にほぼ半数の票が投じられた。メルケル首相のリベラルな政策に長年、不満を抱いてきた保守派と、ドイツの経済競争力強化につながる政策を求める「経済重視派」はともにメルツ氏に大きな期待をかけていたのだ。党首選の結果に対する両派の失望は大きい。

保守派などの協力確保がカギに

クランプカレンバウアー党首は党内の求心力を高めるために、こうした声に配慮する考えだ。8日には青年組織「ユンゲ・ウニオン(JU)」の委員長で保守派のパウル・チーミアク連邦議会議員(33)を次期幹事長に推薦。チーミアク氏は62.8%という低得票率ながら、新幹事長に就任した。

メルツ氏は党首選後、クランプカレンバウアー党首を支持していく考えを明らかにしたものの、党役員には就任しない意向を表明した。ただ、党内の様々な潮流を統合し一体性を高めるためには、メルツ氏を党の役員ないし大臣に起用することが重要と目されており、クランプカレンバウアー党首はメルツ氏と今後、協議していく考えだ。

メルケル氏は2000年から党首を務めてきた。人気が低下したとはいえ、ドイツ、欧州、世界にもたらした功績は大きく、7日の党首退任演説では涙を流す党員もいた。演説後の拍手は10分にも及んだ。

メルケル首相は演説で、「いつまでも終わろうとしない争いはどこに行きつくのか。これについてCDUとCSUは過去数年間に苦い経験を味わった」と述べ、適切なところで妥協し、一体性を保つことの重要性を強調した。よりよい政策を導き出すために党内の様々な潮流、およびCDUとCSUが論争することを是としながらも、争いをだらだらと引きずり、有権者の反感を買うことは絶対に避けるべきだ、というのが党首としての最後のメッセージとなった。

フォルカー・ブフィエ副党首(ヘッセン州首相)はメルケル氏が党首を務めた18年間にローマ法王が3人、SPDの党首が10人、プロサッカーリーグ「ブンデスリーガ」に加盟する「ハンブルガーSV」のトレーナーが24人、代わったことを指摘。メルケル党首の「傑出した業績」をほめたたえた。